第3話 「雪崩の宴」



山荘のレストラン。

大きな窓の外は完全な白の世界。


私の腕の傷から染み出る血が、白いテーブルクロスに花を咲かせる。


「お客様の血は、とても美しい色」


エルメスの純白ドレスに身を包んだ明美が、部屋の中央に立っていた。

残された宿泊客たちが、恐怖に凍りついたように彼女を見つめている。


「さあ、宴の始まりです」


明美の体が、突然、縦に裂けていく。

中から零れ出る白い肉が、雪のように床を覆い始める。


「逃げて!」

女性モデルが叫ぶ。

しかし遅かった。


床から白い触手が伸び、彼女の足首を掴む。

悲鳴と共に、彼女の体が白く変色していく。

肌が溶け、骨が砕け、全てが白い肉へと変わっていく。


次々と宿泊客たちが白い肉に飲み込まれていく。

彼らの顔が、床の雪面に浮かんでは消える。


「この山全てを、私の体にするの」


窓の外で、巨大な雪崩が起きているのが見えた。

しかし、それは普通の雪ではない。

無数の白い人型が、なだれとなって山を下りてくる。


「私たちと一つになりなさい」


明美の顔を持つ無数の白い触手が、私を取り囲む。

その先端には全て牙が生えていた。


逃げ場はない。

白い肉の檻の中で、新たな宴が始まろうとしていた。


(続く)

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