4
ネット前に整列し、審判の合図で握手を交わす。そして真希と達川が、緊張の面持ちでオーダーを交換した。部員全員が渡されたオーダーを覗き込む。
D1 水口・久原 vs 達川・宮川
D2 黒木・百合草 vs 弘光・朝比奈
S1 石川 vs 嵐
S2 久原 vs 達川
S3 黒木 vs 宮川
東のオーダーは100%予想通りだった。D1にエースダブルス。シングルスで結果を残している嵐をS1、そしてS2とS3も実力通り。余った人員がD2。
一方、ネットの向こうの東の部員たちは一瞬くぐもった動揺を漏らした。私がS1というのが予想外だったのだろう。そして、久原とかいう謎の1年が軸になっていることにも驚いたかもしれない。
しかしこれでがっぷり四つだ。D1もD2も互角、S3は厳しそうだが、S2は初対戦でどっちに転んでもおかしくない。そしてS1は……やるしかない。
せめて真希がD2に入ってくれれば。そんな目線を送りそうになり、すんでのところで振り返るのをやめた。
重いスマッシュ。鋭いドライブ。
「サービスオーバー、20-17」
D1の試合が始まった瞬間から、アリーナの空気が変わった気がする。達川は身長が170cm強あり、優しい目つきに似合わず鬼のように峻険な筋肉を纏っている。宮川も達川の隣では小さく見えるが、165cm前後の上背で引き絞られた体型だ。野生的に突っ込んでくる宮川、そして打ち漏らしを強力に叩き落とす達川。とにかく攻撃的なダブルスだ。
一方、麗と久原は力で及ばない分、素早いドライブで相手のミスを誘う。できるだけスマッシュを打たせないよう低空戦に持ち込むが、その分ネットに掛けてしまうミスも増える。
「こっからよー! 一本!」
ベンチから真希の熱のこもった声援が飛ぶ。しかし達川は息を乱さず、隙のないショートサーブで有利を取り、3球目を叩いてゲームを終わらせた。
「21-17、ゲーム」
宮川の雑さもあって点数は競るところまで持っていけたが、及ばなかった。点差以上に実力差を感じる。
コートが余ったのか並行で黒木・百合草――クロユリペアとでも呼ぼうか――の試合も隣で始まっていたが、こちらは点差すら詰められていなかった。
「21-12、ゲーム」
黒木も百合草も上背があり、一方の弘光は140cm台、朝比奈は150cm台と体格差だけ見ればクロユリペアに希望があるように思えたが、弘光がよく動いて拾い、朝比奈――こいつは知らなかったがなかなか打てる1年だ――が小柄に似合わず強力なスマッシュを打ってきた。弘光はよく汗をかくが、朝比奈の方はショートボブ? の重ための前髪を乱すこともなくコートを後にしていた。
0対2。3勝先取なので、次負けたら終わり。
「すみません。次、お願いします」
すれ違いざまに、黒木が謝ってくる。
「おう」
やっぱこいつオシャレ番長とかいう割に真面目だな。……なんて余計なことを考えても気が紛れないくらい、心拍が上がって手が震えてきた。久原にどやされ、濱渦さんにしごかれたこの1ヶ月の答え合わせが待っている。
0勝で終わるわけにはいかない。そう自分に言い聞かせながら、嵐の待ち受けるコートへ踏み入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます