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 ネモジンは外套を脱いで裸体に被せた。それだけの重さでへたり込む寿太郎を引きずり、波打ち際を離れる。焦土と砂浜の境界で二人は腰を下ろし、お互いが見た物をそのままに話した。つまり、寿太郎は砂の中にあった意識のことを。ネモジンは寿太郎が消えてからここまでの顛末と、その体が砂から形成されたことを。


「お話を聞く限り、僕は人間じゃないですね」

「うん」


 寿太郎はぼんやりと言い、ネモジンは簡単に同意した。


「キミは御旅屋からここまで飛ばされた。私は飛ぶどころか延々と歩かされた。となると、嫌がらせでもない限り、アレの力には効力の限度があるわけだ。たとえば、支配下にあるものにしか効かないとか。そうでもなきゃ曲りも反曲点も野放しにしないよね。湧いたそばから屠殺すれば良いんだから」


 ネモジンは踵で乾いた砂を削った。何が滲み出ることもない。それは確かにありふれた土砂に見えた。


「では、キミは何なのか? キミは路傍で死にかけていたところを突然現れた私に助けられて、人の集まる方向に私を案内した。その結末がこの景色だ。この土地には街も拠点もないし、魔法で成り立つ生活に非戦闘員の居場所はない。この土地でただの人間が普通に生活することはありえなくて、現にキミ以外の誰とも出会わなかった。そしてキミの記憶と認識は、ずっと不完全なままだ。まあこれは、聞かずに泳がせていた私も性格が悪いけど。異論はない?」

「ありません」

「なら、あとは推測するしかない。私の読みだとキミは、御旅屋で会った意思が魔性の混じった大地から生み出した人工生命だと思う。用が済んだか、邪魔になったから破棄されて、土に戻って、でも私が埋めた骨格から再生した。そしてそれは確かに人間の在り方じゃない。私の知識に当てはめるなら、キミは泥人形とかゴーレムと呼ばれる存在だ」


 寿太郎は自分の手のひらを見た。薄く黄色い皮膚と青い血管、脂肪の白と赤身の外観は普通の人体と変わらない。皮膚を破って血が出るか砂が出るかを試す気にはなれなかった。そんなことはするまでもないのだった。寿太郎は自傷の代わりに口を開いた。


「僕が死ぬことはあるんでしょうか」

「老衰や病死は人より考えにくいけど、可能性はある。今回だって、骨格の周りに材料があったから肉体も再生したんだ。単に骨格を取り外せば体は失われるし、破壊されれば再生の可能性も消える。それはまあ、死と言えるんじゃないかな」

「なるほど」


 寿太郎は特に感動もなく言った。ネモジンは間を埋めるように首を横に振った。

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