日本一可愛い女の子からの告白を断った理由〜断ってから毎日俺のタイプに合わせようと彼女は七変化を始める〜
田中又雄
第1話 自信過剰な美少女
「マジいつ見ても可愛いよなー」
「どの角度から見ても可愛すぎる...」
クラスメイトの男子たちが、クラスの女子を見ながらそう言っていた。
彼らの目線の先にいるのは、『日本一可愛い女の子』として世間的にも認知されている女の子、雨宮 莉理華である。
確か、全国を対象とした女子高生ミスコンで、去年と今年で2連覇を果たし、来年もほぼ100%の確率で制覇するだろうと言われるほど、世間的に評価の高い女の子。
見た目が可愛いだけでなく、愛想も良く、人当たりも良い。
男女問わず友達も多いが、そんな性格ゆえによく勘違いした男子に告白されては、断ってを繰り返していた。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093091013846089
噂では5つ上の彼氏がいるとか、実はすでに結婚しているとか、本当は男子と一度も付き合ったことがないとか、いろんな噂が実しやかに囁かれていた。
そんな様子を見て、俺は思わず鼻で笑う。
そして、チラッと彼女の方を見ると目があった気がした。
馬鹿か。
全く、俺も相当に毒されたか。
毎日のことを騒ぎ立てるクラスメイト達をよそめに俺はお気に入りのアニソンを聴きながら、お気に入りの小説を読む。
あぁ、朝のこの時間が幸せである。
◇6月15日 朝
なんでもない、いつもの朝のこと。
下駄箱を開けると、そこには一通の手紙が置いてあった。
...ったく、まだこんなのが流行っているのか。
俺は瞬時にそれが不幸の手紙であると思い込み、まずは手紙の開ける部分にカミソリが入っていたりしないかを確認。
そういったものは見受けられない。
そうして、俺はまるで役所から通知書かのごとく、雑にその手紙を開けると、そこには綺麗な文字で書かれた便箋が入っていた。
俺は立ったままその手紙をいつも小説を読んでいるときのように、速読で読み終える。
...ったく、誰がこんな悪戯を。
読み終えた後の感想はそれだった。
手紙の内容を要約するとこんな感じだった。
突然の手紙すみません。
1年、2年と同じクラスだったものの、話す機会がなかなか無く、こうして手紙を書きました。
放課後、話があるので校舎裏で待っています。
by 雨宮 莉理華
どう見てもイタズラである。
あんな人気者が、俺みたいな陰気者に告白まがいなことをするわけがない。
ということで、手紙はポケットにしまい、そのままいつも通り授業を受けた。
いつもより彼女と視線が合う気がしたが、これもまたただの思い込みだろう。
そんなことを考えながら授業が終え、放課後になると俺は帰宅部らしくすぐに教室を出る。
すると、後を追うように雨宮さんが廊下を早歩きで駆け抜け、振り返りざまに俺に向かって「待ってるから」と呟いた。
おいおい、まじかよ。
ずいぶん大掛かりなイタズラだなと呆れながらも、ここで無視すればそれはそれでクラスメイトから反感を買う気がして、仕方なく見えた地雷をふみに行くことにした。
◇校舎裏
あまり使われていない旧校舎の裏側で彼女は待っていた。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093091013882011
...ったく、めんどいなー。と思いながら、彼女の方に近づくと、少し焦ったように髪の毛を整え始める。
「...来ました...けど」というと、「あっ、うん。来てくれて...ありがとう...//」と、夕日に染まっているのとは関係なしに彼女の顔は赤く染まる。
「...それで...話ってなんですか?」
「え、えっと!...その...!わ、私...佐藤くんのことが好きです!つ、付き合ってください!!//」
「あっ、すみません。タイプじゃないので」
迷うことなく俺が即答すると、彼女は少し顔を上げてから「...え?」と言った。
「タイプじゃないので」と、もう一度俺は彼女の顔を見ながらそう言った。
「...いや...いやいやいや...わ、私...可愛くない?」
「いや、可愛いと思いますよ。客観的に見て。けど、どうにも俺のタイプではないんですよね。顔以外にも性格的にも合わなそうですし。ほら、俺はめちゃくちゃインドア派だし、交友関係もできるだけ少ない子がいいんですよ。そしたら変な心配しなくていいですし。どうも信用ないんですよねー。誰にでも優しい女の子とか、交友関係が広い女の子って。そもそも、俺みたいなハズレ物件をわざわざ選んでる時点でなんかおかしいですし。付き合ってから周りから色々言われるのも目に見えてるので、トータルしてやっぱりなしですね」
まるで何かのデータを見ながらいうように、淡々と事実だけを陳列して並べた。
「...じゃあ...私とは付き合ってくれないの?」
「はい。タイプじゃないので」
「...」
すると、彼女は下を俯いて、目に涙を浮かべ始める。
「自信...あったのに...。みんな可愛いって言ってくれるのに!!なんで!!」と、涙目でそう俺に訴えかけてくる。
しかし、こればっかりは俺に言われても知らないとしか言いようがない。
タイプじゃないのはタイプじゃないのだ。
そして、好きになる要素もあまりないのだ。
「...ごめんなさい」
そうやって謝ると、涙目になりながらも彼女はこう言った。
「絶対、好きにさせてみせる!!だから!!タイプを教えて!」
それから、彼女による七変化が始まるのだった。
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