第一章 陽だまりは夢を見る

コハクの彼方


第一章 陽だまりは夢を見る



アクア♂ ︰

高2 異世界に連れてこられた少年 正義感が強く元気


ルディ♀︰

高2 サフィの同級生 アクアの契約者


アネット♀︰

高2 メジスの姉 リングキャンディが最近のハマり


メジス♂︰

高1 アネットの弟 兄という存在に憧れている 西寄りの発音


(性別は変えても大丈夫です)


本編↓


アネット︰ここは、とある学園である。

ここは、皆が望む楽園である。

ここは、人々の理想郷である。


メジス︰理想は手にすることが出来るのか。

願いは叶えることが出来るのか。

そして、湧き上がるこの気持ちは…


アクア︰今日も始まりの鐘の音が、世界に鳴り響く。


………



メジス︰俺は『また』兄が欲しかった。

『また』って言い方は変かもしれん。

けど、俺は…

アンタにかえってきて、欲しかった。


手の届くところに居て欲しかった。


すくいたかった。


そんな時、俺は出会ったんや。

あん時の、太陽に似たアンタに。


この人なら、きっと

きっと、『あの人』のように…


そう、俺は

あの日のすくえなかった夢を

叶えたくて

手を伸ばしたんや。


伸ばした手の行方は…


………


アクア「ん〜(背伸び)

今日の授業も疲れたぁ〜!

なんだよぉ!生物言語って!

普通の外国語かと思ったら!

動物の言葉!?

しかも!?

今日は!猫語!?

確かに、この言語学を

選択したのは俺だけどさ、

わかんねぇって〜!」


ルディ「アクアぁ!お疲れぇ!

さてさて、やってまいりました!

おっ昼ごはん〜!

やっとやっとの昼ごはん〜!

授業終わりは気分がよろし〜!

なんてったって!

ごはんが!

私を!待っている!


今日の気分は〜!

中華っ中華っ〜

学食は〜中華!がいいなぁ!

中華食べたい!

いぇい!(鼻歌を刻むように)」



アクア「ほんとに、頭使うと腹が減るよな…

中華か…いいな。

中華ってこっちの世界にもあるんだな。


ん〜俺は何にすっかなぁ。

それにしても、一丸に中華って言ってもさ、

俺の知識的には色々あるけど、

ルディは何を食べるんだ?」


ルディ「んー?

そっちの世界にも中華ってあるんだね〜

美味しいよね〜ちゅーか!


………むむ、悩みどころだけど

やっぱり!ここは!

ラーメン!」


アクア「それでいいのかよ!?!?もっとあるだろ」


ルディ「だいじょぉぶ!王道だし!

間違いなく!美味しいから!

今の所、外れたことないよ!」


アクア「そういう問題かよ…って、

いくら昼休みとは言えど…

いつもに増して、食堂の奥の方が騒がしいな…

どうした?揉めてんのか?」


アネット「ちょっとぉ!メジス!

ご飯とりすぎ。

次の人の分まで考えて!

だから、

『これだから、華舞台(はなぶたい)出身の人間は…』って

周りに言われるんだよぉ!」


メジス「はぁ、別に取りすぎてへんし。

食べれる時に、食べとかんと、なってだけや。


それに、俺たちが『華舞台(はなぶたい)出身』なんて、

誰にも関係あらへんやろ。


姉貴こそ、今こそ沢山食べれるんやから、

いっぱい食べろや。

今の俺たちにとって、

クッキーはご飯やないからな?


ちゃんとこれも摂れって。

ほら、野菜と肉。

栄養とらんと、倒れてまうで」


アネット「やぁだ!!!!

そんなに要らないもん!!!!!

私が元々ご飯食べるの

苦手なの知ってるでしょ!!!!!!!


メジスの意地悪!!!!!!!!」


メジス「困った姉貴やなぁ…

苦手なのは、わからんくもないけど、

今、俺たちは、

やっとあの環境から抜け出せたのに…


駄々こねれるようになったんわ嬉しいけど、

流石に子供ぽいで。


そんなに食べるのが嫌なら、

能力で決着付ければええんちゃう?」


アネット「え!えぇ!?

能力使って無理やり食べさせようとする気!?

ああ、昔からメジスは…

人に世話焼くの好きなんだから…


それはそれ、これはこれ!

能力使うのは、血の気盛んすぎるでしょ!


あぁ、もう!」


メジス「…俺の能力は、重力操作。

物質の重さを自由自在に操ることが出来るんや。

まあ、反動で腹は減りやすいけどな。

腹ごなしにちょうどええわ。


それは、まるで星を降らせるように。


『空よ、星よ、またたきよ』」


アネット「んわ!身体が重く…!

お姉ちゃんを押し潰す気!?


全く!

これだからアンタは…

こうなったら、

私も使うしかないわね。


私の能力は影。

自分の足から伸びる影を

自由自在に操ることが出来るの。


ふふ、きょうだい喧嘩なんて、はじめてかも。

いつもなら、こんなこと

絶ぇ対にさせて貰えないもんね。


さあ、いくからね!


『影よ、哀しみよ…その足に宿れ…!』」


アクア「うっわ…なんだこれ。

黒いキラキラした光…?

砂…?

これが能力者同士の喧嘩ってやつか…

めちゃくちゃエグくね?

漫画の世界じゃん、こんなん。


てか、やばくねぇかルディ…

食堂壊れねぇ?」


ルディ「んー…この喧嘩は…

流石は、『花咲(はなさき)』…といった所かなぁ。


まあ、学園都市内での喧嘩…

うーん…

これはさすがに、

生徒会役員として見過ごす訳にいかないねぇ」


アクア「ま、まあ、そうだよな…

じゃあ、ルディ!

早速止め…」


ルディ「よし、いっちゃえ〜アクア!」


アクア︰トン、っと

不意に、背中を押された。


身体が喧嘩をしている二人の方へと舞う。


あ、おわったな、俺。


アクア「へ…」


ルディ︰アクアの口から素っ頓狂な声が零れ落ちていた。

思わず笑ってしまう。


多分、普通の人なら無事では済まないかもしれない。


でもね、アクア。


ルディ「だいじょぉぶ!君ならできるよ」


アクア「嘘だろぉぉぉぉ!!!!

おおおおぉおおい!!!!!!」


アクア︰丁度飛ばされたのは、

喧嘩している二人の中心。

なんてこった。パンナコッタ。

どうしたこった。テラコッタ。

お、語呂いいな。

じゃなくてっ!!!!!



メジス「っ!人!?!?」


アネット「え!?!?!!」


アクア︰まるで、時が止まった様だった。

二人の間に割り込む俺。


しぃん、と静まり返った食堂。

思わず俺は 2人を制止させるかのように、

勢いよく両手を広げる。

強く目を閉じた。


アクア「たぁぁぁああーーーーーーーん

まっっぁ!!!!!!!!(震え声)」



アクア︰あぁ、叫んだ台詞が嫌と思うほど、かっこ悪ぃ。

声だって、めちゃくちゃ震えてた。

これが無能力者の運命(さだめ)ってやつか。


ああ、俺…終焉救えなかったよ…はは…



…(間)…


………


アクア「あれ、なんとも…ない…おれ、生きてる?」


アクア︰目を開けると、

俺の目の前で先程喧嘩していた二人が、

目を丸くさせながら固まっていた。



メジス「あ、アンタ…」


アクア「お、おう…わ、わりぃ。

お前ら2人の喧嘩に、部外者が割り込んじまった」


メジス「…いや、ええよ。

それよりも、

俺たちの喧嘩に割り込んでくるなんて、

度胸あるんやな…あの人みたいや」


アクア「いや、意図的にという訳では……あの人?」


メジス「や、こっちの話。

にしても!

俺!アンタのこと気に入ったわ!


俺は、メジス言うねん。アンタは?」


アクア「あ、え、へ?あ、えっと、アクア…」


メジス「そうなんや!

アクア!良い名前やな!


よろしくな、アクア。

こっちは、姉貴のアネット。

赤子もとい、駄々っ子バブやで」


アネット「ち、違うもん!!!!

バブなのは!さっきのだけじゃん!!


えっと、さっきは巻き込んで、ごめんなさい。

よ、よろしく、ね?」


アクア「お、おう…

この世界は人に

赤子だの、

バブだの…

そんな風に言うのが流行ってるのか…?」


メジス「なんや、姉貴の他にもバブ居るん?」


アクア「い、いや、こっちの話…」


ルディ「あ、止まった〜?

さっすがはアクア!ありがとぅ!


お疲れ様だよぉ」


アクア「いやいやいや!お前さぁ!」


ルディ「え?なに?止まったからいいじゃん」


アクア「い、いや…まあ、そう、なんだけど…


二人が止まらなかったら俺死んでたぞ?

わかってんのか」


ルディ「え?

あぁね。

だいじょぉぶ!だいじょぉぶだよぉ!


そう簡単に死なないよ。

それに死なせない。

簡単に死ぬとは思えない。


だって、アクアだもん」


アクア「なんだよ。

どっから来るんだよ、その信頼」


アクア︰キーンコーンカーンコーン

昼休みが終わる合図がした。


ルディ「あ、うそ…ラーメン食べ損ねた…

ショック…」


………


ルディ︰そして、あれから数日後、とある学園都市の一角で。


メジス「あ、やっと見つけた!アクア!」


アクア「んぁ?


お!メジスだっけか。

久しぶりだな。

食堂での時以来だな。

元気してたか?」


メジス「あ、えっと、…

この間は、その…」


アクア「?」


メジス「ごめんなさい!!!!!

怪我とかあらへんかった!?」


アクア「え、あ、全然大丈夫。

というか、そんなに謝んなくていいぜ?


たしかに、びっくりはしたけど、

もう、気にしてないし。


寧ろ忘れてたくらいだ!

気にすんなって!」


メジス「ほんま!?ふぅ…ならよかったわ。


にしても…」


ルディ︰安心したのか、メジスは一息つく。

そして、ズイ、と

メジスは顔をアクアへと近づけた。


メジス「やっぱり…アンタ…」


メジス:この笑顔が

この温かさが

この優しさが

アクアは、やっぱり『あの人』に似てる。

俺は直感でそう、感じた。


アクアの水色の瞳。

その瞳をじっと見つめる。


ああ、やっと『見つけた』。


アクア「か、か、か、顔がちけぇっ!!!」


メジス「わ、とと…

なんや、そんな声上げて。


なあ、アクア。

なんで、俺から逃げんの?」


ルディ︰不服そうにメジスが顔を顰(しか)める。


メジス:俺は、もう…『あの人』を

失いたくなかった。

そっと、アクアの方へと手を伸ばし、

頬を撫でる。


アクア「いやいやいや!

なんでってさぁ!!!

男同士で顔近づけあってもさぁ!

普通逃げるって!!!」


アネット「メジス〜、ごめんお待たせ〜!

購買寄ってたら遅くなっちゃった。

おまたせ…………あ」


ルディ︰どうやら、

待ち合わせをしていたのか、

目の前の建物からアネットが出てくる。


空気が冷たくなった気がした。


しぃんと静まりかえった空間だけが

そこに存在している。


アクア「………どうすんだよ、この空気…


えっと、その、誤解だ。

色々と、誤解」


メジス「アクア、その言い方の方が変に聞こえるわ」


アネット「………ぁ」


アクア「ん?」


アネット「どうぞ、私の事はいいから、

全然気にせず続けてください(早口)」


アクア「何を!?」


アネット「あ、あの、今の私は

壁であり空気なんで…

存在しないんで」


メジス「はぁ…(溜息)

またか、姉貴」


アクア「え!何!?

またかって何!?!?」


アネット「いや、ごめん…

私のことは気にしないで…

本当に…本当に大丈夫だから…」


メジス「なんで?w

おもろいなぁ姉貴は。


今回は、なんもないって」


アクア「今回は!?!?


いやいや!そうじゃなくて!

何笑ってんだよ!?


あ、いや、この状況は、

笑った方がいいのか…

はははッ(乾いた笑い)」


メジス「さて、まあ、冗談はさておき…

この辺にしとくわ。


ところで、姉貴」


アネット「なにさ、メジス」


メジス「今日買えたん?

いつもの、あれ」


アネット「え?あれってどれ?

いっぱいあるけど」


メジス「いっぱいあんの?

知らんかったわ。

姉貴言うたら、リングキャンディやろ。

やって、昔から好きやん」


アネット「あぁ、リングキャンディね。

ふふん、ちゃんと買ったよ。

それに、特売の日だから

いっぱい買っちゃった。

なんか、懐かしいんだよねぇ〜


ほら!いちご味!」


ルディ︰リングキャンディを得意げに見せるアネット。

そのキャンディをアクアは見つめる。


アクア︰なにかに似てる…

そう思った時にはもう遅かった。


俺の口からはもう既に答えが出ていた。


アクア「あ、その形、見たことあるな。

おしゃぶりじゃん、それ」


ルディ︰再び空気が凍る。

先程以上に空気が冷たくなるのを感じた。


それとは逆に、

アネットの顔がみるみると赤くなっていく。


アネット「こぉんの!クソがぁ!

なにが!おしゃぶりだぁ!」


メジス「はは、おもろすぎるやろ!

ええな、アクアって。


なんか、兄貴が出来たみたいや」


メジス:いや、『戻ってきた』みたいや。


アクア「へっ、兄貴?俺が?」


メジス「そう、兄貴。

俺さ、お兄ちゃん欲しかったんよ。


よかったら、

俺のお兄ちゃんになってくれん?」


ルディ︰メジスが手をアクアへと差し伸べる。


アクア︰俺は、

迷うこと無く、その手を取った


アクア「俺で、良ければ」


アネット「ふぅん、

メジスがそう言うなら。

つまり、私の兄貴分ってことね…

良いわよ。許してあげる。


ただ、リングキャンディを

おしゃぶりって言った事は

許さないからね。

よろしく、クソ兄貴」


アクア「それは、すまん。

でも、クソは余計だ、

クソじゃねぇし」


アネット「ふふ、冗談。

冗談よ。

改めて、


よろしくね、お兄ちゃん♡


なんてね」


アクア「お、おう…

お兄ちゃん呼び…悪くないな」


メジス「やーい!照れてやんの」


アクア「うるせぇ!照れてねぇよ!」


アネット「ふふ、良かったわねメジス。

たしかに、どこか『あの人』に似てるかも…


あ!ねぇ、二人とも!」


アクア「ん?なんかあったか?」


メジス「どしたん?姉貴」


アネット「見て!太陽がキラキラしてる!


日差しが、温かいね」


To Be Continued



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