コハクの彼方【台本ver.】

あいる

序章 青い空、天高く飛ぶは白い鳥

コハクの彼方


第序章 青い空、天高く飛ぶは白い鳥


これは終焉に向かう物語



アクア♂︰

高2 異世界に連れてこられた少年 正義感が強く元気


サフィ♀︰

高1 異世界への案内人


ルディ♀︰

高2 サフィの同級生 アクアの契約者


マリ♀︰

高3 ルディの友達


(性別は変えても大丈夫です)




本編↓


サフィ︰ここは、とある学園である。

ここは、皆が望む楽園である。

ここは、人々の理想郷である。


サフィ︰理想はどこへ向かうのか。

願いはどこへ向かうのか。

そして、抱えこんだトラウマは…


ルディ︰今日も始まりの鐘の音が、世界に鳴り響く。


………


マリ:この世界。

私たちが、住む世界。

この世界では、

能力者は【終才(しゅうさい)】と呼ばれている。

【終才】を扱う人々の、社会的地位は低い。

そんな彼らは、

天空に

誰の手にも穢されない

『孤高の国』を生み出した。


ルディ:『誰しもが社会的地位には囚われず、

差別をされない、

苦しむ必要のない、

この力を誰かのために使える様な、

平等な世界であるように』

そう、【終才】たちは願った。


それが、学園都市。


マリ:そして、

【終才】たちは、各々に、

特殊な能力を持つことが出来る。

人々はそれを、

【終演(しゅうえん)】と呼んだ。


サフィ:この世界を物語(フィクション)と、

例えるのなら。


んー、そうですねぇ。


そんな彼らの、

僕たち、

私たちの、


生きる希望を探す物語。

と、でもしましょうか。


………

〜花園にて〜


アクア「学校から疲れて爆睡をかまし…

溢れんばかりの甘いの匂いで、

目が覚めると…


そこはまるで、

ペンキで塗られたような

紅い花が咲き誇る楽園(らくえん)だった。


…って、いやいやいや!?


なんだこの、夢…?


いや、感覚的には現実…な…気が…?」



ルディ︰目を覚ませば、

煉瓦(れんが)造りの床の上。

さっきまで自室で眠っていたはずなのに。


なんて、非、現実的な夢を見ているのだろう。


アクア「いやいや!

なんだよ!

この!

よく漫画でありそうな展開!?

最近流行りの異世界召喚とか!

転生モノじゃん!

もし、転生だった場合俺死んでるんだけど!?


 おぉぉい!!!

誰かこの状況、俺に説明してくれよ!


訳わかんねぇからぁ!」



ルディ︰叫んだ声が響く。

ゆっくりと辺りを見渡した。


己の目に映るのは、一面の紅い薔薇。

それは、まるで西洋の…

不思議の国に誘(いざな)われそうな、花園。


薔薇園?

己の知っている知識の中では、

その言葉が近いかもしれない。



サフィ「『ようこそ、『アリス』。いらっしゃい』」


アクア「え、は?誰!?

ようこそ…って?


えっと、アリス…ってなんだ?

俺のことか?


いや、良く考えれば、俺アリスじゃねぇし。

誰だよ、アリスって」


サフィ「あ、目が覚めました?

はい、ようこそ。


えっと、たしか…

アクア…さん?であってます?」


アクア「え、あ…おう…

って、いや、なんで俺の名前知ってるんだよ…」



サフィ「ほっ、合っているようで、安心しました。

改めまして、ようこそ、アクアさん。

はじめまして、私はサフィ。


そして、ここは理想郷。

人々の夢が集う楽園都市であり、

能力者の集う、学園都市ですよ。


まさか、そんなことも知らない、

分からないんなんて。(大袈裟に溜息)


全くアクアさんは…よちよち歩きの赤ちゃんですか?

まあ、良く考えれば、

この世界では、あなたは産まれたてのひよこも当然…


  はっ、もしかして、これが、噂のバブ…?」


アクア「え、あ…?


(間)


いやいやいや!

なんで、まだ状況が理解できてないのに

俺は貶(けな)されてんの!?

罵られる必要、今絶対に無かったよな!?


それに、ばぶじゃねぇし!

誰が!よちよち歩きだ!ゴラァ!


  俺は! めっちゃバリバリ現役!

元気な男子高校生だし!」



ルディ︰理想郷?

学園都市?

彼女の言葉を何一つ

アクアは理解が出来なかった。


サフィ「いや、そう言われましても…

なんというか…威勢は良いですね…


んー

何も知らないあなたは、赤子も当然。

つまり、バブ。

ですよね?


というか、本当にこの人が、

選ばれし『アリス』なんですか。


あなたの反応を見ると…

そちらには、私の能力で呼ばれるような

予兆はない様ですね。


その上…

こちら側の知識すらないなんて…

そちら側の世界の教育はどうなってるんですかね。

異世界論の授業とかないんですか?


これは…

困った困った。

エンエン」


アクア「教育も何も…

異世界論なんて聞いたことねぇし…

あったとしても、漫画の世界だし…


てか、選ばれたってなんなんだよ…


そもそもここはどこで、

よく見る異世界召喚系的には…

どう、言うのが、台詞的には正解なんだ…


そうだな、よく聞くのは、こうだ。

えっと、


俺はこの世界で、何をすりゃいいんだ…?」


サフィ「何をすれば良い…


(間)


良いですね。

それなら、

私もあなたの

その、言葉の船に乗りましょう。


(深呼吸)


ふっふっふっ、その言葉!

待ってましたぁ!


これから、あなたには、

この世界の終焉を止めてもらいます。

そして、この世界を救ってください。

私から言えることはそれだけです。


以上」


アクア「重そうな話しの割には、

簡素な説明だな!?!?!?

おい!?!?!?!?!?


もっとあっただろ!?!?!?


っと…

そんな茶番はとにかく…


終焉…終わりってこと…か?」


サフィ「はい!正解です!

そう!終わりです〜!

言葉の意味分かってるじゃぁ、ないですか〜!

ご理解が早くて助かりますぅ〜〜〜!」



ルディ︰そう、嬉々として彼女が笑う。

その瞬間、突然の眠気がアクアを襲った。

サフィの手には空けられた、小瓶(こびん)が握られている。


途端に、どんどん彼女の言葉が遠のいていく。

視界が、ゆっくりとぼやけていった。


サフィ「安心してください、アクアさん。

詳しい話はまた後ほど。

んー、きっと、

ルディさんがしてくれますよ。


改めて、ようこそ学園都市へ。


あなたの、新たな人生の始まりに祝福を…」


ルディ:アクアは、声を上げることしか出来ない。

ああ、なんて無力。

所詮、人間は、眠気には逆らえないのだ。


アクア「まって、声がどんどん遠のいて……!

意識が、どこかへいっちまう…!

なんなんだよ、この眠気は…


おい、お前!

なんて?

なんて言ったんだよ、教えろよ。

まだ、理解が追いついてないんだけど!?


く、クソ!

ま、まてって!!!!!!」


サフィ「ふふ、あなたには少しだけ眠ってもらいます。

先日、ルディさんから頂いた、

『対象の相手を眠らせる小瓶』が役に立つとは。


移動中、万が一、暴れられては困りますから。

ゆっくりとおやすみくださいね。


さあ、行きましょう、アクアさん。


何かあったら、『おい、サフィ』と叫んでください。

できる限り、すっ飛んでいきますから。


まあ、これを覚えてるかは、

分からないですけど、ね」


ルディ︰プツリと

ここで、意識が途切れた。



………

〜教室にて〜


アクア「ま……て………っ!

待てって!!!


ハッ!

こ、ここは…」


ルディ「うぇぇ!?

わ、ぁ、びっくりした!

ちょっとアクアったら、

急に大きな声出さないでよね…


なんかあったの?」


アクア「や、やべ、

先生の声が心地よすぎて…

授業中なのに、寝ちまってた…」


ルディ「あ、寝てた、だけ。

寝言かぁ〜。

はは、なぁんだ。


は〜良かった。

授業中なのに、突然私の隣で、

『待てっ!!!』って叫ぶんだもん。

何かあったかと思ったよー!


まあ、アクアが授業中に寝るなんて

今に始まったことじゃないもんねぇ。


んー、こんなに大きな寝言は、

珍しいけどさー」


アクア「や、いつもじゃねぇ!し…多分…

だって、今まで生きてきた中で、

聞いた事も受けたこともない授業で…

なんつーか、お経に聞こえるんだよ。


なんだよ、能力応用学って。

俺の世界じゃ聞いた事ねぇよ…


んー…

聞く感じ、魔法みたいなもん、なのか?」


ルディ「うんー?ま、ほ?

っていうのは、

私は聞いたことない言葉だけど…

多分?そんな感じなんじゃない?」


アクア「雑だな、おい…


くぁ〜(あくび)

ん〜!(背伸び)

にしても、なんか、変な夢を見た気が…する…が…」


ルディ「えー!どんな夢見たの?

ちょっと気になるかも!


面白かった?楽しかった?

それとも、授業中にあんなに叫ぶくらいだし、

怖かった?」


アクア「興味津々だな…

あ、えーと、うーん…


(間)


  いやぁ、覚えてねぇな」



………


サフィ︰時を戻そう。

これは、彼がこの世界に

やってきたばかりの時の、

ちょっとした物語。


〜生徒会室にて〜


ルディ「『ふふふ、ようこそ!

『アリス』!


ここは理想郷!

学園都市!

お願い、

君には、この学園を!世界を!

救って欲しいの…』


って、

さっきサフィちゃんに貰った

カンペに書いてあること読んだけど、

この挨拶って必要ある…?」



アクア「え、そんな事、俺に言われても…

内容からして、そうだな…

理想郷…?ってなんだ。

てか、さっきから『アリス』ってなんだよ。


いや、そもそも!ここはどこだ!?

俺はベットで気持ちよく、寝てたはずなんだけど…

  宿題だって、

しようと思って、

珍しくやる気出して、机にノート出してたってのに」


ルディ「えっと、待って。

まだカンペ続いてるから読むね。

なになに…


『よく聞いてくれたね、『アリス』。

それでは!

この学園都市を統べる生徒会役員!

その、副会長の私がお応えしよう!』


おぉう…えっと、なんというか、

サフィちゃんには悪いけど、

なんか、ひとつひとつ、台詞が恥ずかしいかも。

『アリス』ってなに?

私も分からないんだけど…


まあ、カンペはいいや。


ねぇ、君の名前教えてくれない?

あ、ごめんごめん。

名前を名乗る時は自分からが礼儀だよね。


私はルディ。よろしくねぇ」


アクア「お、おう…

カンペ…

『アリス』ってなにかお前もわかんねぇのかよ…


まあ、そう呼ばれる俺も、

なんか恥ずかしけどな…


えっと…アクア。俺の名前はアクアだ」


ルディ「そか、アクアって言うのね。

よろしくね、アクア。


改めて、この世界に来てくれてありがとう」


アクア「この世界…?」


ルディ「そう、ここは君の住む世界とは違う世界。

さっきも何回か言ったかもだけど、

私たちはここを『学園都市』と呼んでいるわ。


ん〜分かりやすく言うなら、なんだろ…

様々な想いが集う場所?

能力者達の集う理想郷?

それが正しいかな。


まあ、そんな場所に何故俺を?って思うでしょ。


そうね、この世界に君を呼んだのは他でもないの。


…君に、この世界を救って欲しいんだ(真剣な声で)」


アクア「…へ?世界を?救う…?


(間)


いやいやいや!

今一瞬、ない脳みその中、

脳内で頑張って考えたけどさ、

世界救うとか訳わかんねぇんだけど!?

漫画の主人公じゃあるまいし!!!」


ルディ「…君だけが頼りなの」


アクア「へ…?」


ルディ「君が、アクアが頼りなの。

まだ、今来たばかりの君に

詳しいことは話せないけど…


でも、私達は今、君にしか頼れないの。


その為に私たちは、この世界に君を召喚した。

突然で混乱しているのは、わかってる。

今の私には、あなたに頭を下げることしか出来ない。


アクア、お願い…この世界を、

学園都市を救ってくれないかな?」


アクア「そう言われても…俺には何も…」


ルディ「アクアにはできる」


アクア「へ…」


ルディ「私は…アクアには、その力があると思ってる」


アクア「そう、か?」


ルディ「うん、アクアにしか頼めないの…

この世界は今、終焉に向かっているわ。

私たち生徒会はこれを食い止めたい。

だから、あなたを呼んだ。


異世界に呼ばれた君、

そう、異世界から来た、君だから、

私たちの世界を救うことが出来るって

思ってる。


だから…この世界を

この学園都市を救って欲しいの


こんなこと、君にしか頼めない」


アクア「………

ぁ…ぉ、ぉう…わかった…


えっと、わかったと言った手前、

何をすれば良いかはまだ、

よくわかんねぇけど、

困った奴を、

今泣きそうなお前を

放っておけない、突き放したくないって俺は

思ってた。


だから、俺で、よけれ…ば…

であってるのか?」


ルディ「… ほんとう?


(前のめりに)ありがとう!

あなたならそう言ってくれると思ってた!


これから、私たちのこと、

よろしくね、アクア」


サフィ︰カチャ、という音が部屋に響く。

なんの音だろうか。


そう思って、重さを感じた首元を見る。


アクアの首には水色とオレンジ色、

二つの宝石が

あしらわれた首輪が付けられていた。


アクア「っ!?え!?なんだよ!これ!?」


ルディ「私の能力は、生成。

ざっくり言うと、想像したものを形に

具現化出来る能力なんだよね。

これは『契約の鎖』

この鎖はね、私が外すまで外せないの。

私が呼んだら、

直ぐに私の元に来れる仕様になってるから、

いっぱい私の役に立ってね。


ね、アクア?」


アクア「はぁぁぁぁぁ!?!?!?」


アクア︰どうやら俺は、

とんでもない奴と、約束…

いや、契約…しちまったみたいだ


そして、俺はまだ知らない

この鎖の音(ね)が

終焉への

始まりの合図ということを



………


〜生徒会室前の廊下にて〜


ルディ「マリちゃん、おまたせ。っと、

いや〜緊張したよ〜。

とりあえず、

後はサフィちゃんたちが案内してくれるって。


に、しても…


始まったね」


マリ「ありがとう、ルディ。

色々任せてしまってごめんなさい。

別件が溜まってて…


そうね、始まった」


ルディ「ううん、どういたしまして。

別件の方は大丈夫?」


マリ「えぇ…

昨年、私が生徒会長に就任する前…

3月に起きた事件たち…


『華舞台(はなぶたい)』の宴を殲滅(せんめつ)した英雄の始末書、

その後の後処理。

そこで祀(まつ)られた、

『夢現(むげん)きょうだい』たちの保護、

カウンセリング。


そして、『言ノ葉(ことのは)事件』。


その他諸々…

まだまだ、問題は山積み…


何かあったら、ツテで他の子達の手を借りるわ。


ルディ。

あなたはサフィちゃんと共に

【『世界の終焉』】

こちらに、 集中して頂戴」


ルディ「うん、任せて!

これで大丈夫なら良かった。

ただ、彼。

思ったよりもちょろかったけど…


大丈夫かなぁ。

変な人に騙されないか心配。


彼は、まだ…

この世界でのレッテルは『無能力者』


授業とか、色々ついていけるかなぁ…」


マリ「うん、大丈夫だよ。

だって、サフィちゃんが呼んだ子だもの。

それに、彼は『あの人』に似てるわ。


今は、彼のことを信用しましょ?


…ルディこそ、よかったの?」


ルディ「何が?」


マリ「全部知った上で、

私の手を取ってくれたじゃない。


本当によかったの?

正直、あの事件が起きたのは、私のせいだから…

私の事…嫌いになっても

おかしくないって思ってた。」


ルディ「まあ、最初聞いた時はびっくりしたよ?


でもね、大切な友達で、

パートナーだったあなたの頼みだもの。

断るはずがないよ」


マリ「…そっか、ありがとう」


ルディ「どういたしまして」


マリ「私の能力は未来予知。

世界の全ての『先』を見通すことが出来る…


だから、だからこそ…

私はこの未来を変えたいの。


もう、だれも、失いたくないから」


ルディ「分かってるよ、大丈夫」


マリ「………うん」


ルディ「マリちゃん」


マリ「…?」


ルディ「空が晴れ渡って綺麗、だよ」


マリ「うん…そうだね」



To Be Continued


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