第15話 逆鱗
「で、でででででデートぉぉぉぉぉ!?」
月曜日の朝、桃花と登校してる俺は、昨日夏宮とデートしたことを伝えた。
すると桃花はオーバーリアクションをして驚き、危うく転びそうになっていた。
「な、な、な、な、な、……っ!」
「驚いて声も出せないか。分かるぞその気持ち」
「な、なんなのよこの馬鹿ー----ッ!」
「いてぇ!」
俺は顔を真っ赤にした桃花から最大級の平手打ちをされた。
ぶたれた箇所がひりひりして痛む。
「何よッ、何よッ、何よッ、何よッ、何よッ……! ほんっとうにサイテーだわ! そんなんだから中学受験も失敗したんじゃないの!?」
「……は?」
桃花から放たれたとある言葉を聞いて、俺の堪忍袋の緒がプツンと切れていくのを感じた。
俺は気づいたら桃花の両肩を掴み、彼女を壁際まで追い詰めていた。
「きゃっ!」
「お前、言って良いことと悪いことの区別もつかないのか?」
「……ちょっと肩が痛い!」
「なぁ、お前はそういう一線だけは越えないやつだと思ってたよ」
「な、何よ……! あたしは事実を言ったまでじゃなi」
「事実? 事実なら人を傷つけてもいいとでも? 桃花、お前には失望したよ」
そう言って俺は桃花の両肩から手を離し、早歩きで歩いていく。
正直に言うと怒りを感じたのは一瞬だけで、あとは義務感で桃花を追い詰めていた。
「待っでよ……っ! 謝る、謝るからぁ! あたしを、見捨てないでぇ……!」
後ろから桃花の泣き声と謝罪の言葉が聞こえるが、俺はそれを無視して学校に行き、教室にたどり着いた。
「朝、何があったんですか?」
「……! 夏宮……!」
「ちょうど、泣いている春野さんと怒っているあなたの姿が目に入ったので」
「……見てたのか」
「はい。ですが私が見たのは先程も言ったように泣いている春野さんと怒っているあなただったので何故あんなことになったのかまでは……」
俺は気が進まないが、夏宮に事の始終を説明してやることにした。
「今朝、桃花に俺と夏宮がデートしたことを言ったんだよ」
「……秋山君、それは本当ですか?」
今にも氷の剣で刺してきそうな怖い声色で、夏宮は俺に聞いてきた。
「あ、ああ……。桃花に『アンタ、顔がニヤけてるわよ。何か理由があるなら話しなさい』と言われてつい……」
「……それが事実なら、秋山君に失望しました」
「あ、えっとな、俺がアイツに対して怒ってたのは……」
「聞きたくありません。では」
「あ……」
そう言って夏宮は俺の前から去ってしまった。
……桃花のせいだ。俺は即座にそう思い、桃花を半分本気で恨んだ。
放課後。
俺は一人で帰ろうとしたが、何者かに制服の袖を掴まれた。
相手は桃花だった。今にも泣きだしそうな表情で、俺の方を見ていた。
「朝の発言は、ゴメン……。あたし、頭に血が上っちゃって……」
「……正直半分はお前のことを恨んでるよ」
「ホント、ゴメン……」
「でも、もう半分は恨んでない。だから元気出せよ、桃花」
「……っ!」
俺は無意識のうちに桃花の頭を撫でていたようだった。
すると彼女の表情はさっきとは打って変わり、嬉しさを隠しきれてないウキウキとした表情をしていた。顔も赤くなってた。
「ねぇ! 一緒に帰りましょう!」
「……あぁ、仕方ないな」
そうして俺と桃花は一緒に帰った。
桃花の表情は終始楽しそうで、なんだか見てるこっちまで少しだけ気分が高揚した。
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