第14話 デート②
次は……駅前のショッピングモールに行くことになっている。
「もう疲れた、って顔してますよ?」
「……そりゃ長年不登校児やっているからな」
「そんなんじゃ、この先学校に登校出来ませんよ?」
「そしたらお前が何度でも支えてくれ」
「……!」
この日では初めて見る夏宮の照れ顔を見ると、なんだか心の奥底が温かくなっていく。
そして、色々話していってたらショッピングモールに着いた。
「で、映画を見るんだっけか?」
「はい。今流行りの恋愛映画を見るつもりです」
「恋愛映画……か」
俺は恋愛物はあまり得意じゃない。
単純に興味ないからだ。でも、デートのためというのなら仕方なく見よう。
しかしなんで夏宮が恋愛映画なんて見たがるのかが、分からない。
「お前はなんで恋愛映画を見ようと思ったんだ?」
「単純な理由ですよ。こういうデートにはあま~い恋愛映画がつきものですから!」
「そ、そうか……」
ドヤ顔で答える夏宮に少しだけドン引いてしまった。
俺たちは三階までエレベーターで行き、映画館にたどり着いた。
「私がチケットを買うので、秋山君は飲み物やポップコーンを買ってください」
「……ポップコーンって……」
「私が食べたいので! キャラメル味でお願いしますね! あと私の飲み物はメロンソーダでお願いします!」
ポップコーンなんて食べてたら、音が聞こえなくなって気が散るだろ……。
俺は夏宮にそう言いかけようとしたが、チケットを買いに人混みの中に消えていく彼女を見たら何も言えない。
それに、彼女にとっては恋愛映画なんてただのデートのための手段なのだろう。
だから平気でポップコーンなんて頼めるんだ。
俺はコーヒーとメロンソーダとキャラメルポップコーンを買い、夏宮は二人分のチケットを買った。
そして二人で館内に入館し、隣同士で座った。
――二時間後。
やっと恋愛映画の上映が終わった。
ポップコーンは無くなっており(ほぼ夏宮が食べた)、コーヒーとメロンソーダも無くなった。
俺たちは館内を出て、ショッピングモール内にあるベンチに座った。
「どうでしたか?」
「どうでしたか? って、あの恋愛映画の事か? まぁ、可もなく不可もなくって感じだったよ」
「そうなんですか! 私は思ったよりずっと面白くてずっと夢中になってました!」
「夢中になってた割に、ポップコーンはバリボリ食べてたけどな」
「そ、それは私がポップコーン好きだからいいんです!」
「そういうものか」
これで、夏宮が純粋にポップコーンが好きなのが確認できた。
「この後はどうするんだ?」
「この後は……レストラン街でご飯を、と言いたいところですが懐に余裕が無いので帰りましょう」
「……俺は懐に余裕があるけどな」
「えっ!? 本当ですか!?」
「わっ!」
夏宮が急に目を輝かせながら俺の腕に胸を押し当てる。やはり大きくて柔らかい……じゃない! 何を考えてるんだ俺!
「いくら残ってます??」
「えっと……八千円ぐらいかな」
俺は財布を取り出して中身を確認し、夏宮に額を報告する。
「わぁぁぁぁぁ……! 凄いです! あなたは本当にすごいです!」
「いや、単純に父さんからデートするなら一万円持っておけと言われたものでな……」
「それでも凄いです! どこに行きますか!? 私としてはイタリアンレストランがいいんですけど……」
「分かった。そこにするよ」
「いいんですか!? ありがとうございます~!」
夏宮がまたもや興奮して、今度は俺の腕に胸を押し付ける。
こんな屈託のない夏宮の笑顔を見ていると、デートしてよかったと心底思った。
ちなみにイタリアンレストランで夜飯を食べた後は普通に現地解散をした。
家に帰ると母さんと紅葉が俺に対して質問責めをしてきて大変だった。
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