第13話 デート①
今日はいよいよ夏宮とデートする日だ。
デートの詳細な予定はメール上でやり取りを交わした。
確か午後二時に駅前の噴水で待ち合わせをすることになってるが……。
夏宮がいまだに来ない。メールを送ってみても全然既読が付かない。
ちなみに俺は母さんに服を選んでもらって、最低限の身だしなみを整えたつもりだ。
「はぁ……はぁ……! ち、遅刻してしまいました!」
「お、やっと来たか」
「す、すみません……! メイクをバッチリキメて、服をじっくり選んでたら準備に時間が掛かり遅くなってしまいました!」
「そ、そうか」
確かに夏宮の顔はいつもより美人だし、服も青いカーディガンにフリフリの白いワンピースを着ていてとても綺麗だ。
「……私に見とれてましたか?」
夏宮が手を後ろに組んで近づき、上目遣いをしてくる。
くっ……! なんでこんなに綺麗なんだ……!
「ふふっ。ちょっとからかってみただけですよ。さ、行きましょう」
「あ、ああ……!」
俺たちは予定通りに近くのカフェに入った。
店内はそこそこ混んでて、少し待ったが俺たちはカウンター席に案内された。
「何を頼みますか?」
「……ブラックコーヒー、かな」
「じゃあ私は紅茶とショートケーキで」
夏宮がボタンを押して店員が来て、俺たちは注文した。
「私って、そんなに魅力的ですか?」
夏宮は少し艶っぽい笑顔で俺に問いかけてくる。俺は生唾を飲む。
「……少なくとも、客観的に見れば魅力的なんじゃないか? 胸は大きいし、性格はいいし、美人だし……」
「そう、ですか」
なんだか今日の夏宮は小悪魔っぽい感じがする。俺をたぶらかそうとしているのか?
「私って、モテるんですよ?」
「……きゅ、急に何を」
「本当ですよ? ほぼ毎日ラブレターをもらうし、呼び出されて告白された回数は五十回以上です」
「……夏宮は、俺を試しているのか?」
「…………はい」
急に色っぽく答える夏宮に、俺はドキドキしていた。
これが『好き』なのだろうか?
いやいや、そんなはずはない。俺は首を横に振って……。
「そういうリアクションをしてる時点で、私の事が好きってことですよね?」
「い、いや……」
「一つ教えてあげますね」
「な、なんだよ……」
「恋愛は自分から動かないと、駄目なんですよ?」
「……そんなこと、お前に言われなくても分かってる」
俺は何を言ってるんだ?
そんなこと、夏宮に言われるまで分かろうとしなかったくせに。
「おまたせしました。ブラックコーヒーと、紅茶と、ショートケーキです」
「あ、ありがt」
俺が礼を言い終わる前に、店員は微笑みながら去っていった。
「私のショートケーキ、一口食べてみますか?」
「……ま、まぁ貰えるなら貰っとくよ」
「はい、あーん」
「んむっ!」
夏宮がショートケーキにフォークを入れて、一口分を取って俺の口に入れてきた。
まさか女に『あーん』されるとは思わなかった。
「秋山君、顔が少し赤いですよ」
「……そ、そうか?」
「ええ。ふふっ、かわいい」
「揶揄うな」
「それは無理な相談ですね」
しばらくベタ甘な会話を楽しんだ後、俺の全額奢りでカフェを退店した。
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