第11話 寄り道
学校に通って数日が経った。
俺は美少女二人とよく行動してるのか、妙な噂が立ってて友達は一人もできてない。
まぁ、出来なくてもいいが。
……この調子なら、夏宮は俺に構わなくなるんじゃないか?
このまま上手く行ったら、夏宮は俺に構う理由がなくなる。
現にメールもそんなにしてないし、学校で話す回数も夏宮より桃花の方が断然多い現状だ。
なんだこの不安は?
今は昼休み。
俺は自分のお金でパンを買うまでに成長した。当たり前だが。
いつものように中庭で桃花と二人でご飯を食べている。
「なぁ、桃花」
「何よ」
「もし俺がこのまま不登校になったら、夏宮はもう俺に構わなくなるのかな?」
「……はぁ? いきなり何言ってるのよこのボンクラ!」
俺は何を言ってるんだろう。
つい、思ったことが無意識に口に出ていたようだ。
桃花の反応は当然だ。
桃花が夏宮を嫌っているのは知っているからだ。
「そんな状況になったら手を叩いて大喜びしてあげるわよ!」
「おいおい……」
「で、いつそんな状態になるのかしら?」
「そんな状態は来ねーよ」
「え~……残念だわぁ~……」
俺は桃花の言い方に腹が立ったのでつい強く言ってしまった。
でも桃花は一ミリも悲しんでいないようだ。
「でも癪ね……」
「なんだ?」
「アンタが不登校になったら、絶対夏宮はアンタの家に来るんでしょ?」
「ああ、多分」
「そしたらまた夏宮はアンタに自分の胸を揉ませて、そしたらアンタはまた学校に来る……」
「それが癪、って事か?」
「そうよ! また女に釣られるアンタなんて見たくないわ!」
「……ふぅ。これでまた不登校になる理由が出来た」
「アンタ、今のあたしの説明を聞いてそれいいなとか思ってたんでしょ!?」
「……そうだな」
「クソ! 意地悪! 意気地なし!」
「そんなに罵倒しても無駄だぞ。教えてくれてありがとうな、桃花」
「はぁ!? どういたしましてなんて絶対に言ってやらない!」
「もう言ってるぞ」
「うるさいわね! いちいち揚げ足取るな!」
こうして俺と桃花との昼食は終わった。
……もう一度不登校になってみるってのも、手だな。
放課後。
「アンタがどっかいかないように、あたしが見張ってあげる!」
「とか言いつつ、一緒に帰りたいだけだろ」
「何言ってるの? 本当ならアンタみたいな生ゴミと一緒に帰るなんて嫌だけど、仕方なく! し・か・た・な・く!」
「はいはい」
そう言って俺と桃花は一緒に帰ることになった。n回目だが。
「ねぇ、アンタ」
「……なんだよ」
「寄り道しない? いつもただ家に帰るだけじゃつまらないでしょ?」
「……別にいいが、どこに寄り道するんだ?」
「駅前のクレープ屋さんよ! 新作メニューが出たって言うから食べたいのよ! 悪い?」
「いいや、全然悪くないぞ」
「なら決まりねっ!」
俺たちは駅前まで歩いてクレープ屋さんでクレープを頼んだ。
新作メニューがあるのは本当だったらしく、女子中高生の行列が出来ていたが、なんとか桃花は新作クレープを手に入れることが出来たようだ。
今はベンチに座ってクレープを食べている。
「……美味しいわね、このクレープ」
「そうか」
「アンタのはどうなのよ?」
「……普通に美味しいぞ」
「なにそれ」
甘いものには興味がないため、俺は店の定番メニューを頼んだ。
……俺はクレープを完食し、隣にいる桃花を見る。
桃花はまだクレープを食べている。桃花の幸せそうな顔が目に入る。
この笑顔を見たのは小学六年生以降だな。
この笑顔が見られただけでも、今日の寄り道は価値のあるものだった。
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