第5話 メールで雑談

 家に帰り、スウェットに着替えて自室にこもる。

 やはり俺にはここが一番合っている。学校なんて煩わしいだけだ。

 ……通知音が鳴ったのでスマホを見てみたら、夏宮からメールが来た。

 そういえばあの時夏宮とメアドを交換したことをすっかり忘れていた。


『秋山君、メールで一度やりとりしませんか?』

『それってどういうことだ?』

『寝るまでメールで雑談をしましょう!』

『ああ、そういうことか。俺は構わないが、課題は大丈夫なのか?』

『課題は……気合いで終わらせます!』

『お前には似合わないセリフだな』

『あはは……。秋山君こそ、課題は大丈夫なんですか?』

『俺も気合いで終わらせる……かな?笑』

『もう! 私のセリフを真似しないでください! しかも笑をつけないでください!』

『すまんすまん』


 なんで夏宮が俺と突然メールで雑談をしようだなんて考えたのか、俺には分からない。

 質問してみるか。


『なぁ、なんで突然俺とメールで雑談しようと思ったんだ?』

『メール機能が正常に使えるかの確認です』

『お前らしい真面目な理由だな』

『あはは……』


『ところで秋山君は兄弟とかはいるんですか?』

『妹が一人いるな。紅葉くれはっていうんだ。紅葉って書いてくれはって読む』

『紅葉さんですか、かわいらしい名前ですね』

『アイツは俺が合格できなかった中高一貫校に合格したんだよな。だから家族としての情はあるが憎しみの方が強いな。口もあまり利いてないし』

『そ、そう……ですか。ところで、俺が合格できなかった中高一貫校ってどういう意味ですか?』

『……そんな核心に触れた事はまだ言えないな。俺とお前はまだそこまで仲良くなってないからな』

『そ、そうですか』


『ところでお前は兄弟姉妹は居ないのか?』

『私は一人っ子です。確かに両親からの寵愛は一身に受けてる感じはしますが、時々寂しくなることがありますね』

『俺は一人っ子の方がいいな。優秀な妹なんていらない笑』

『それは笑を付けるようなことではないと思いますが……』

『まぁとにかく、一人っ子なのも兄弟姉妹がいるのもそれぞれメリット・デメリットがあるってことだもんな』

『それはそうですね』

『ところで桃花にも兄がいるんだよな』

『春野さんに……ですか? あの人は一人っ子に見えましたが……』

『若葉っていう名前の兄がいるんだ。今は大学一年生で一人暮らしをしてるみたいだが笑』

『そうだったんですね。あのワガママさは兄がいる故だったんですね』

『桃花のあの態度は……八割ぐらい俺のせいなんだよな』

『そ、それも核心に触れること……なんですか?』

『ああ』


 こうして夏宮と雑談をしてると、何故か楽しいと思っている自分がいる。

 夏宮が性格良くて胸が大きいからか?

 もしそうなら、単純すぎて自分に対して笑っちゃうな。


 この後は文字通り寝るまでメールでの雑談で盛り上がった。

 好きな食べ物とか、好きな色とか、好きな動物とか……。

 課題は結局俺はやらなかったが、夏宮は文字通り気合いで終わらせたらしい。

 学級委員長の底力は凄いな。

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