第6話 登校②
朝。
このまま学校をサボってしまおうか。
そんなことを考えていると、スマホから通知音が鳴った。夏宮からのメールだ。
『今日からあなたが不登校にならないように毎日メールを送ります』
……どうやら俺の思考は読まれていたようだ。
めんどくさいなと思いながら俺はスウェットから制服に着替える。
そして階段を下りてリビングに行く。
「アンタの制服姿、似合ってないわね」
朝食を作っている母さんに驚いたように言われた。
確かにこの前までスウェット姿がデフォルトだった男が制服なんて似合うわけがない。
「お兄ちゃんはなんで学校に行こうってなったの?」
紅葉から純粋な疑問が投げられた。妹は俺が本来行くはずだった学校の制服を着ているので憎たらしい。
答えるのもめんどくさいので、俺は無視して椅子に座る。
「無視は良くないぞ」
新聞を読んでいる父さんが厳かな口調でそう言った。
……理由が理由なだけに、答えづらいんだよな。仕方なく適当に答えるか。
「学園物のアニメ見てたら、俺もこんな生活がしてみたい! って思ってさ」
「ふーん。なんかお兄ちゃんらしくない理由だね」
「あら、そんなくだらない理由だったの? ようやく高校生としての自覚を持ったとか、そんな感じだと思ってたのに」
母さんは驚いたような口調で失礼なことをサラッと言う。
しかし妹よ……この理由が俺らしくないって見抜いてたのか。流石は中学受験成功者なだけはある。
「てかお兄ちゃんがいきなり学園物のアニメを見て『こんな生活がしたい!』だなんて思うタイプじゃないでしょ」
「紅葉、宗太郎にもそういうことがあるのよ」
「えーっ、絶対おかしいと思うー」
「紅葉、早くしないと学校に遅刻するぞ」
「……あっ! やばっ! じゃあ行ってくるねー!」
紅葉は父さんに注意されて事の重大さに気づいたようだ。
「あ、待ちなさい紅葉! 朝ごはんは……」
「そんなのいらなーい!」
「……はぁ。まったくあの子ったら」
「まぁいいじゃないか」
父さんは総じて紅葉に甘い傾向がある。
まぁそりゃそうだよな。
ただでさえ父親は娘に甘くなる傾向があるのに、俺が合格できなかった中高一貫校に合格してるんだ。
「宗太郎、アンタは朝ごはん食べなさいよね。もう出来てるから」
「分かったよ」
朝ごはんは白飯と焼き鮭と豆腐とわかめの味噌汁だった。
俺はなんとかそれをかきこんで、家を出た。
……玄関前で、桃花が待っているではないか。
「生ゴミ、アンタと一緒に登校してあげる」
「……どういう風の吹き回しだよ」
「夏宮なんかにアンタを奪われるのは……」
「奪われる? 何言ってるんだ桃花」
「……はぁ!? バッカじゃないの!? なんでそんな言葉は聞こえてるのよ!?」
「すまんな。で、俺と一緒に登校するんだっけ? 俺みたいな生ゴミとカップルに見られるかもしれないんだぞ?」
「それは癪だけど……でもいいから一緒に登校するの!」
「はいはい、分かった」
こうして俺と桃花は一緒に登校することになった。
周りを見渡してみたが、周りは俺が思うほど俺たちのことを気にしてない様子だった。
「アンタ、これからどうするのよ」
「……これからって?」
「これからよ! また不登校に戻るの? そっちの方があたしは嬉しいけど」
「……夏宮のモーニングコールがある限りは登校し続けるさ」
「……はぁ!? マジムカつく! アンタなんて死んじゃえばいいんだー!」
「お、おい待てよ……」
桃花は顔を赤くして走り去ってしまった。
……あっ、こけた。パンツの色はパステルピンクか。
だいぶ引きこもっていて視力が悪いはずなのに、なんで桃花のパンツの色だけはハッキリ見えるんだ?
謎だ。
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