第3話 桃花
――次の休み時間。
「あーんーたーぁー!」
案の定、桃花が俺の席まで来て俺の机を両手で強く叩く。
俺は頬杖を付きながら外の景色を見ている。次の授業が体育の奴らが道具の準備をしているのが目に入った。
「ちょっと聞いてるの!? 生ゴミには言語を理解する能力すらないわけぇ?」
「……ちゃんと聞いてるさ」
「ならせめて、話をしている人の方を向くのがマナーなんじゃないの?」
「生ゴミの顔をお前に向けたら、せっかくのお前の美貌が台無しになるだろ」
「……それもそうね」
桃花は夏宮に負けないぐらいの美少女だ。
だが夏宮と違って目尻がツリあがっていて、全体的に厳しい性格が顔に現れてるような顔つきをしているが。
「で、巨乳は気持ちよかった?」
桃花が刺々しく聞いてくる。
「……まぁ、それなりには」
俺はどうとでも取れる角の立たない答えを言う。
「何よそれ。生ゴミの癖にいっちょ前に巨乳を堪能してるんじゃないわよ! 馬鹿!」
……正直に言うと、桃花の胸のサイズは絶壁に近い。だからだろうか。
自分が悪者扱いされて、挙句の果てに夏宮が自分にないもので俺を慰めたのがイラついたんだろう。当たり前だ。
……チャイムが鳴った。
「とにかく! 生ゴミの癖にいっちょ前に幸せを享受してんじゃないわよ! じゃあね!」
桃花は悪役が吐くような捨てセリフを吐いて席に戻っていった。
――昼休み。
俺はとりあえず夏宮の方を見た……が、彼女は友達に囲まれていてとてもじゃないが話しかけにくい。
……俺は夏宮と昼飯を食べたいのか!?
いやいや、違う。そんなわけない。俺は首を横に振って自分の雑念を追い払う。
「ねぇ、生ゴミ」
「ん?」
俺は後ろから桃花に声をかけられて、振り向いた。
桃花は若干顔を赤らめながら腕を組んでいる。
「なんだ、桃花」
「アンタってどうせ、一緒にご飯を食べる奴いないんでしょ。夏宮は友達と食堂に行ってるし」
「そうだな。……俺はお金も持ってないのでこのまま食べないつもりだ。お前は?」
「はぁ!? 食べないつもりとかマジありえない! ちょっとこっちに来なさいよ!」
「うわっ!」
俺は桃花に手首を掴まれて強引に歩かされた。
やれやれと思いながらも、俺と桃花は購買部の前に辿り着いた。
購買部の前にはそこそこの列が出来てて鬱陶しかったが、なんとか俺と桃花はパンを買うことが出来た。
「で、どこで食べるんだ?」
「はぁ? そんなの決まってるでしょ! 中庭よ!」
「な、中庭……?」
「人も少ないし、木陰があるベンチもあるから最適でしょ? 何? 不満?」
「ふ、不満というか……」
暑いともいえる気温の中、外でご飯を食べるのは俺には拷問に等しかった。
だが、桃花に逆らうのはもっとめんどくさいので従うことにした。
「分かったよ」
「ふん。分かればいいのよ、分かれば」
結局俺と桃花のパンは桃花の金で買った。
そうして俺と桃花は中庭の木陰があるベンチに座った。
「アンタさ、なんで急に学校に来たのよ」
「……夏宮に誘われたから」
俺がそう言った瞬間、桃花に強烈に頬を平手打ちされた。
「アンタバッカじゃないの!? 女が理由で登校するなんてサイッテー!」
「し、仕方ないだろ。胸を触って、それで……」
「はん! 女の胸触ったらあっさり学校に来るのね。……だったらあたしの胸を……」
「ん?」
「な、なんでもない!」
最後、桃花が何を言ってるのかわからなかったが、何を言ってたんだろうか。
きっと俺に聞かれて不利になることなんだろうな。
「さ、さっさと食べなさい!」
「わ、分かったよ……」
こうして、桃花と昼食を食べた。
俺のことを生ゴミだと思ってるくせに、なんで俺と昼食を食べたのは謎だ。
女心ってよく分からないな。
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