葉g流ℳA

天珊 編音

第1話 その古い木造造りの建物は

その古い木造つくりの建物は、おそらく大正か昭和ころからあるのだろう。もとは金持ちの商家の持ち物だったせいか、おそろしく普請がよく、その建築美にひかれてこの建物の一角に住居を構えているものもいるとかいないとか。 中に入ると木の色は漆黒を帯びて、鏡のように光を反射する。古い町屋つくりと近代的な集合住宅が混在し、殺風景な廊下の角をまがると小さな日本庭園が突如現れたりする。そうそう、邸内で生育している樹木を保護しているので庭かどうか関係なしに突然木の枝が床や廊下を貫通していたり。

まあちょっとしたダンジョン感のある集合住宅といった趣もあり、そういうのが好きな人は好きだと思う。

 俺もそのうちのひとりで、最近引っ越してきた。やっと近頃、自分の部屋の場所を間違えずにたどり着けるようになったばかりだ。…たぶん覚えにくい場所だから前の住人も引き払ったんじゃないか?ちょっとそんな気がしている。

 個人の所蔵から集合住宅化したころの中途半端な増築部分がみにくいのよな。そんなことを独り言ちながら自室へ向かっているはずが、ちょっと曲がり角を間違えたか?

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葉g流ℳA 天珊 編音 @Tenxian_Amne

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