第6話 考察

 二人が手に入れたスキルはアリシアがCランクに属する『跳躍』、セリナがEランクに属する『草笛』だった。


「でも、何で私もスキルを……?」

「アリシアがスキルを手にした後に喜びで俺の背中を叩いただろう。恐らくだが、あれでスキルが発動してしまったんだ」

「えぇ、聞いてないよぉ! 何とかならないの!?」

「スキルの説明はしただろう。次のスキルを手に入れたければ三十日間、大人しく待つんだな」

「そんなぁ……。あ、でもこれで三十日間は心置きなく何も考えずにラグナにベタベタ触れるって事だよね。それならそれで好都合かも!」


 そう言うとセリナが俺の身体を調べるかのようにベタベタと触り始めた。

 以前からレティア村の村人の体質について調べたいと思っていたが、俺のスキルの事もあって触れるのを躊躇っていたらしい。


「セリナ、戯れるのは程々にして。でもこれでラグナの言う通り、肉体的接触で手に入るスキルが変わる事は良く分かったわ」

「でも、ラグナもBランク以上のスキルが手に入る所ってまだ見た事が無いんだよね?」


 リーフェの言葉にセリナが反応し、その言葉に今度は俺が静かに頷く。

 やはり知識を欲する賢者と言うべきか、セリナは少し考え込む素振りを見せた後にゆっくりと自身の考えを口にした。


「じゃあさ、どうやったら次に良いスキルが手に入るかをちゃんと考察してみない?」


 こうして俺のスキルについての話し合いが始まった。


「ねぇ、例えばラグナとキスしたら手に入るスキルってどうなるのかな?」

「……何が言いたい」

「ラグナのスキルが肉体的接触が多ければ多いほど良いスキルが手に入るって事は分かったけどさ、キスって接触面積は低い訳じゃない? その辺、どうなのかなって!」

「キ、キ……キキキ、キス!? セリナ、冗談はいい加減にして!」


 次の瞬間、顔を真っ赤に染め、凄い剣幕でリーフェがセリナへと噛み付く。ふとアリシアに視線を向けてみると、彼女もほんのりと頬を赤く染めていた。


「えっ、普通に真面目なんだけどなぁ。ねぇ、ラグナはどう思う!?」

「試した事はないが、可能性はあると思う」


 確かに接触面積は少ないが、キスをすると言う事は二人はそれなりの仲だと言う事だ。

 Bランク以上のスキルを手に入れられる可能性は充分にある。


「じゃあ、リーフェは今からラグナとキスして貰おうかな」

「な、何で私が!?」

「だって、私もアリシアもスキルを手に入れたばかりだし。普通に考えてリーフェの番じゃない?」

「私だってスキルを手に入れてから三十日間も経ってないわよ!」


 そう言い放つと彼女は俺達に背を向け、ギルドホームから逃げ去るように出ていった。

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