第3話 交換条件
テラスに到着するやいなや、俺は彼女に再度手を握られた。戸惑いの表情を浮かべる俺に彼女が「ごめんなさい」と謝意を示すと、彼女は俺に備え付けの椅子に座るように促して来た。
一体、何がしたかったんだろう。
「私はリーフェ・イシュタール。人によっては私の事を『剣姫』って呼ぶわ。君の名前は?」
「俺はラグナ・フェルドナ、アンタの事は知ってるよ。単独でAランクの魔物の軍勢を退けたとか、認めたヤツにしか自分の名前を呼ばせないとかな」
「へぇ、私ってそんな有名人? そこまで知ってるなら私の自己紹介は必要ないみたいね。後から来る二人の紹介はその時にするとして、率直に聞くね。君、どんなスキルを持ってるの?」
「……どうしてそんな事を聞く?」
「ギルドで君の手を掴んだ瞬間、頭の中に『錆取りスキルを獲得しました』って不思議な声が聞こえたの。これ、たぶんだけど君のスキルの影響だよね?」
錆取りスキルとは何と微妙なスキルだろうか。
だがしかし、問題はそこじゃない。
意図せずして俺の『スキルギフター』が《剣姫》リーフェ・イシュタール相手に発動し、彼女に新たなスキルを与えてしまった事にある。
剣姫相手に力で勝てる訳がないし、策を考えるにも時間が足りない。
かくなる上は今晩にでも帝都から逃げ出し、誰も俺の事なんて知らない地へと向かうしかない。
そんな事を考えていると──。
「ねぇ、ラグナは自分が入るパーティを探してるんだよね?」
「あ、あぁ」
「それってさ、低ランクのパーティじゃないとダメなの?」
「そんな訳……大体、高ランクパーティが俺なんかを相手にする訳がないだろ」
「そうかなぁ。じゃあさ、良かったらウチのパーティに入ってくれない?」
「剣姫のパーティって、まさか……」
百花繚乱、ギルドで唯一のSランクパーティ。普段の表立っての雑務などはリーフェが一人で担っており、他のメンバーについては殆ど知られていない謎多きパーティだ。
まさかそんなパーティに誘われるとは夢にも思わなかった。
「ちなみにギルドメンバーは私とさっきの二人の全部で三人だよ。パーティに入ってくれたらラグナに取ってはハーレムだね」
だが、高ランクパーティに無条件で入れる筈がない。
予想通り、リーフェはギルドに入れる為の条件を出して来た。
その条件とは『スキルの正確で詳細な情報を明かす事』と『パーティメンバーの為に継続的にスキルを使用する事』だった。
「わかった。だけど、俺のスキルは相手がいないと成立しない。その為の協力はして貰う事になるが、それでも良いか?」
その言葉にリーフェは小さく首を縦に振った。
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