第4話

「雄太さん、楽しかったです」

「それならよかったけど、あんなのでよかった?」

「はい、ぬいぐるみも可愛いですし、満足です」

「そっか」


優愛ちゃんとそんな会話をしながらも、俺たちは二人でアパートの部屋に戻ってきていた。

優愛ちゃんの手には今日ゲームセンターでとったぬいぐるみをもっている。

大学生ということもあり、もちろんお金はあまりない。

だから、他のやつらと遊ぶ感覚で一緒に遊んだというのに、あれでよかったのだろうか?

まあ、喜んでくれていることを考えるといいことなのかもしれない。


「また、デートしてもらえますか?」

「お金と時間があるときにな」

「優愛は、お金がなくても大丈夫ですから!」


部屋に入る前にそんなことを言われた俺は、苦笑いをしながら返事をした。


「おーい、バイト中に辛気臭い顔をするなよ、相川」

「立見さんは、バイトでも辛そうじゃなさそうですね」

「まあな、こう見えても私の私生活は充実しているからね」


バイト先で、立見さんに得意気に言われる。

確かに立見さんは俺とは違って、何かに悩んでいるという状況には見えない。

本当にうらやましい限りだ。


「どうやれば、うまく断れると思いますか?」

「あー、言っていた女性との話か?」

「はい」

「ちゃんと断ればいいんじゃないのか?」

「でも、傷をつけませんか?」

「傷をつくことなんか、女性は相川を好きになった時点で覚悟はしているんじゃないのか?」

「そういうものですか?」

「ああ、私は実際そう思って好きになるぞ」

「立見さんの恋愛観は聞いてないですよ」

「だったら、愚痴を私の前で言うなよ」

「すみません」

「謝るくらいなら、バイトをタイミングよく変わってくれるだけでいいんだがな」

「すぐにそういう会話にもっていくのは、さすがだと思いますよ」


立見さんの話のうまさに、俺は呆れながらも今後について考えるのだった。

一度デートしたとはいえ、断るほうが絶対にいい…

その言葉を考えるのだった。

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