第3話

バイト終わりということもあり、時間は遅い。

部屋に入るときに、優愛ちゃんと会うこともなかった。

大きくなったらねと言ったものの、俺としては優愛ちゃんと付き合う気はなかった。


「年齢が違いすぎるよな…」


相手は小学生で、俺は大学生。

優愛ちゃんも成長していけば、すぐに俺のことなど嫌いになるはずだ。

だからこそ、ずっとうまく誤魔化すことができれば、告白したことも忘れるだろうし、会うということも今後なくなっていくだろうからだ。

うまくいくかはわからないけれど、今だけとわりきればいいだけだ。

どれだけ長くても、大学を卒業してしまえば、就職先で会うこともなくなる可能性が高い。

だから、大丈夫。


そう思っていたのだが、うまくいかないのが人生というものだ。


「雄太さん。どうですか?今日のコーディネートは」

「いいと思うぞ」

「ふふふ、そうでしょう!優愛は学校でも大人っぽいと言われていますから!」

「そうなんだね」

「はい!」


自信満々にそう言葉にする優愛ちゃんに俺は苦笑いをするしかなかった。

どうしてこんなにすぐに会うことになってしまったのか…

それは、朝から優愛ちゃんに出会ったからだ。

バイトが休みの今日は、大学に行った後は自由だった。

久しぶりに、どこかでぶらぶらと買い物でもしようかと思ったのだが、部屋からでたところで、優愛ちゃんに「おはようございます」とあいさつをされて、「おはよう」と返したところはいつも通りだった。

でも、そのあとにあったことである。


「昨日は、雄太さんにああやって言われたから、学校が終わったらデートをしてください」

「それは…」

「優愛のレディとしての大人の魅力を見せてみせますから!」

「あ、ああ」

「それじゃ、待ち合わせの時間は十五時で、部屋の前でいいですか?」

「ああ」


まくしたてるように言われた俺は、そう返事することしかできなかった。

そして、先ほどのようなことになったのだ。

うまくかわすことにするというのが、俺が立てた計画だというのに、すぐに失敗に終わってしまった。


だからこそ、俺は優愛ちゃんと二人でデートに出かけることになったのだ。

確かに優愛ちゃんが言うように、身長はかなりの差があるのはしょうがないことだけど、小学校に行くときにはしないであろうリップやいつもであればズボンを履いている優愛ちゃんが、スカートでいるところを見ると大人っぽさはある。

可愛いとも思う。

でも、それは俺に合わせようと必死になっているからこそであり、俺のような人を好きになることがなければ、もっと合わせたような服装ではなくて自分自身の好きな服を着れたんじゃないのかと思ってしまう。

だから、俺はつい口にしていた。


「優愛ちゃんは無理してない?」

「どういう意味ですか?」

「いや、優愛ちゃんは俺なんかを好きにならなくてもいいんじゃないかって思ってな」

「そんなことはありません。雄太さんは素敵な人です」

「そうかな…」


優愛ちゃんにそう言われたが、俺は思ってしまう。

年上にもつ憧れでそう思っているだけではないのかと…

でも、それならそうだ。

満足するまで付き合うというのもいいのかもしれない。

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