第2話
「大きくって何歳からですか?」「いつからならいいですか?」
そんな質問攻めをなんとかはぐらかせながらも、自分の部屋へと逃げてきた。
隣の部屋だから、ドアを開けるタイミングが同じであれば、すぐに出会うことになるだろう。
そんなことを考えつつも、これからどう対応するのが正解なのか悩む。
相談する相手というのがいればいいが、そういう相手はいない。
俺は、少し時間を潰すと、悩みを払拭するべくバイトに向かった。
いつものようにバイトをこなす。
悩みは確かに頭の中をたまにぐるぐるとかき乱すこともあるが、なんとかやりきった俺は大学の先輩でもあり、バイトの先輩でもある
「立見さん」
「どうしたんだ、相川」
「女心というのがわからなくてですね」
「そ、それは確かに難しい問題だな。でも、どうして私に聞くんだ?」
「だって、立見さんは女ですが、イケメンで、女心がわかる人っぽいですから」
「どういう意味だ、それは…」
「女性のプロフェッショナルっていうことを言いたいだけですね」
「なんだ、その不名誉のあだ名は…」
立見さんは不名誉のあだ名と呼ぶが、それは決して俺がつけたものではない。
噂というものでもなく、本当に言っている人がいて、その話を聞いたからだ。
なんとなく、そんな俺の言いたいことをわかってくれたのだろう、立見さんはため息をつきながらも答えてくれる。
「はあ…まあいい…今そのことを問い詰めても相川の質問には答えられないからな」
「ありがとうございます」
「大丈夫だ。これはバイトを一回交代で許してやれることだからな」
「わかりました。その時はやりますよ」
「よし、契約成立だな。私が考える女心について簡単に教えてやる」
「お願いします」
「簡単に言えば、わからないというのが答えだな」
「ええ…せっかく聞いたのに、それはないですよ立見さん」
「そうはいってもな。逆に私が相川に男心がわからないと答えたら、どう返答するんだ?」
「えっと、そうですね。男っていうのは単純で、お調子者が多いと思うので、一緒に何かをしてあげられれば喜ばれると思いますね」
「でもそれは、相川が思っていることだろ?もし、ここで私が、実は聞いた男というのが、本を読むのが好きな男だとしよう。するとどうなる?」
「それは、隣でゆったりと本を読むことが、その男にとっての必要なことになりますね」
「だろう?だから、私がどれだけ一般的な女性像の女心を言ったところで、相川の質問の答えにはならない可能性が高いだろ?」
「そう言われたら、そうなのかもしれませんが、それでバイト変更一回というのは…」
「ふーん、じゃあ何をしてくれるのかな?」
「そうですね、ご飯とか…」
バイト一回変わるよりもいいだろうと、ご飯を奢るほうがいいと思ったが、立見さんに笑われる。
「ははは…相川、それはさすがにできない」
「どうしてですか?」
「だって、相川が私に質問してくるということは、その女性のことが気になっているということだろ?どういう意味で相談してきたのかは、私にもわからないが、ちゃんと向き合うためにも、高い勉強代だと思っておくんだな。だから、他の女である私を食事に誘う前に、その女性のことを考えてやれよ」
立見さんは、そう言葉にすると、さっさと帰っていく。
俺は立見さんに言われた言葉を考えながらも、ゆっくりとアパートの部屋へと帰るのだった。
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