大きくなったらね

美しい海は秋

第1話

「あの、雄太さん。好きです。付き合ってもらえませんか?」

「えっと…」


俺は戸惑っていた。

だって、告白された相手というのが、家の隣に住む小学生の優愛ゆあちゃんだったからだ。

今は教えてと言われて勉強を少しみて、休憩をしているタイミングだった。

だから、急に話を振られてびっくりして何も言えなくなる。

どうしてこうなったのか…

少し前の会話から、思い出す。


「雄太さんは、学校の人と遊ばないんでしょうか?」

「うーん、そうだね。優愛ちゃんも知ってると思うけど、ここは大学から少し遠いからね」

「そうですね。でも、静かでいい場所だって」

「それは、俺も思ってる。いい人が多いよな」

「はい!」


目の前にいる女の子優愛ちゃんもその一人だった。

大学生になり、一人暮らしを始めた俺は、早くから大学に受かったということもあり、多くの物件を選べる状況だった。

だからか、大学に近すぎる場所というのは、まだ卒業していない人が残っていたりしてあまりいい場所というのがまだ空いていない場所が多く、早めに大学近くに引っ越そうと考えていた俺は、そこで戸惑っていた。

そんなときに紹介されたのが、今の物件だった。

大学からは少し距離はあるものの、自転車を使うことでそんなに時間がかかることもなくいけることを考えると、気にしなくてもいい。

それに、高校生までスポーツをやっていたことで、今でもそれなりに食べることを考えると、自転車で運動するくらいがいいと考えたのもあった。

ただ、問題というべき点もあった。

それは、大学生というのが近所に俺くらいしかいないことだった。

だから普通であれば、大学生同士で盛り上がったりするのだろうことも俺はすることもなく。

早々にバイト先を見つけつつも気づけば隣に住んでいた小学生の優愛ちゃんとあいさつをするようになり、大学生だということもあり、勉強を教えることになっていたんだが、まさか大学の話から、告白されるとは思っていなかった。

何も言えない俺に対して、優愛ちゃんは聞く。


「雄太さんは、優愛のことどう思いますか?」

「可愛いと思うよ」

「ありがとうございます。では、付き合ってくれますか?」

「それは…」


難しい。

まず年齢が邪魔をする。

だって、俺は大学生で優愛ちゃんは小学生だ。

確かに優愛ちゃんは可愛いと思うことは多いけれど、それは妹としてだと思っている。

何かいい言い訳を考えられなかった俺は言葉にしていた。


「大きくなったらね」


子供だと思っている優愛ちゃんに向かって…


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