少女と出会い

コンコンコンコンコンコン


コンコンコンコンコンコン


コンコンコン


「うるさーい!!!!」


深い深い眠りは窓をコンコンする音で盛大に妨げられた。

滅多なことでは怒らない私もこれには怒り心頭。睨むように窓の外に目を遣ると、少女が安心したような顔をしていた。

誰だこの人。

何か喋っているのか口をパクパクさせているが窓越しでは一切聞き取れない。

虫の居所が悪いままエンジンをかけ窓を開けると


「良かったですよー死んでるかと思っちゃいました!」


なんだこの人。

車中泊してる人間が全員練炭自殺してるとでも思っているのか?

私が怪訝な表情で少女を見上げていると、

少女はハッとした様子で頭を下げだした。


「私の早とちりで快眠を妨げてしまい大変申し訳ありませんでした······私、工藤桜くどうさくらと申します年は16。以後お見知りおきを」


「は、はあ。ご丁寧にどうも。えーと、私は山城凛やましろりん18歳です。勘違いさせちゃったこっちにも責任はあるのであまり気にしないでくださいね?」


工藤桜を名乗る女の子は、長い黒髪がよく似合う美少女だった。首元に巻いた青いストールがよく似合っている。遠くからでも目印になりそうなくらい映える青だ。


「そう言っていただけると幸いです。ところで、凛さんはいつからこちらへ?」


あ、いきなり名前呼びとはこの娘かなり強引な距離の詰め方するタイプだな······あんま得意じゃないんだよなあ。


「夜明けくらいにここに着いてそのまま車の中で寝ていたよ」


「そうですか······ちなみにですけど、はご存知ですか?」


「え?帰るって別に来た道をそのまま戻れば帰れるけど」


「そう上手くいけばいいんですけど······いや、けど車ならもしかして············」


ぶつぶつ言いながらなんか考え事し始めたみたいなんですけど!

ちょっとこの状況で置いてけぼりにするのやめてもらえる!?

気まずいというか何すればいいか分からないんだけど!!


もういっそのこと二度寝してしまおうかと思い始めた時。


「とりあえずお腹すきませんか?私奢らせて頂くんで良ければらーめん食べに行きませんか?らーめん」


どういう思考を巡らせればそんな言葉が出てくるんだよ!


突然、初対面で年下の女の子に食事に誘われるという稀有な状況に私が言葉を詰まらせていると工藤さんはさも当然かのように助手席に乗り込みシートベルトを締めていた。


まだ許可もなんにもしてないんですけど!?

え、なに!?最近の若者って怖っ!!


今更、嫌ですとも車から降りてくださいとも言える勇気を持ち合わせていない私は、この謎の状況を理解できないまま工藤さんのナビゲートに従い車を走らせた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2024年12月28日 20:00
2024年12月29日 20:00
2024年12月30日 20:00

迷子少女がサイカイする話 丹羽之Es河 @045niwa @esk_045

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ