02_ようこそ、乙女ゲームの世界へ
02_01_主人公、ようやく主人公っぽくなる
『……とに……大いなる……』
(う、ん……? なん……だ……?)
『……のもとに……子らよ、大いなる……』
(誰かの、声……? いや、それにしては、何か、変な……)
『……の名のもとに……人の子らよ、大いなる……』
(遠近感が無いって言うか、頭の中に直接響いてくるっていうか)
『――神の名のもとに罰を与える。人の子らよ、大いなる罪は、魂を
(あ、これ、確かあれだ)
ゴッデス2を開始すると
『Regot:Glorious destiny 2』
『〜 Deep Red Surges 〜』
(……そんなサブタイ、付いてたっけ?)
・
・
・
【アレクトール帝国
最初に感覚を取り戻したのは、たぶん触覚だった。
「な、にが……」
感じたのは、空気の違い。
たった今まで部屋の中にいたはずなのに、肌が風の流れを感じている。
「ここは、どこだ……?」
まぶしさに閉じていた目を、ゆっくりと開けていく。
すると。
「っ、やっぱり、外……」
太陽の光を目が認め、薄ぼんやりとしていた視界も、段々とくっきり輪郭が伴ってきた。
「っていうか、マジでここどこ?」
そこに広がっていたのは、西洋チックなアンティークな街並みだった。
見慣れない光景……間違いなく日本じゃない。
けれども、なぜだろう。
どうしてか俺は、この街に来たことがあるような、既視感にも似た不思議な感覚に包まれていた。
「いや、そうか。あのふたりが言っていたとおりなら、ここは――」
「うむ、転移は上手くいったようじゃぞ、マリィ」
「とーぜんじゃない、ネリィ。あたしたちが万全に〝道〟をつくったんだもの。異物のひとつやふたつの持ち込み、どうってこと無いわ」
「オイ待て、異物って俺のことか?」
思わずツッコミから入る俺。
振り返ると、そこには見慣れた双子の姉妹。
破壊神にして創造神を自称する、ネリィとミリィの姿があった。
「おお、
「違うわネリィ。ここでは〝お兄ちゃん〟よ」
「お兄ちゃん?」
首を傾げた、その瞬間。
それは突然、俺の顔の前に出現した。
【プレイヤーの登録が完了しました】
「うおわっ!?」
【プレイヤー名:ナギサ=クロンタール】
「これ……ゲームのメッセージ・ウインドウ?」
俺の視界上に、ホログラムみたいな半透明の枠が現れた。
「っていうかこの枠、ゴッデス2のデザインと同じだ……」
恐る恐る、指先でチョンと触れてみる。
触った感触は特にない。が、ウインドウは消えてしまった。
「で、ここではあたしはマリィ=クロンタール」
「妾はネリィ=クロンタールじゃー」
「クロンタール……同じ苗字?」
だんだんと理解が追いつきつつある俺の様子に、ふたりの神様はにっこりと笑顔をつくった。
「妾たちも、特等席で凪沙のゴッデス攻略を眺めるのじゃ」
「だからネリィ、お兄ちゃんだって。せっかく世界観が完璧なのに、アタシたちで崩しちゃったら元も子もないでしょ」
改めてネリィとマリィの姿を見ると、ふたりの服は、この街並みに溶け込みそうな、中世ヨーロッパ風の衣装に変わっていた。
……いや、言い直そう。
ふたりはまさに、ゴッデスの世界観にぴったりな格好に変わっていたのだ。
「って、うおっ!? 俺の服も変わってる!?」
「当然なのじゃ。プレイヤーが違和感バリバリだったら困るのじゃ」
「ちょっと貧相な服だけど、最初のうちだけだから我慢しなさいよ」
ここまでくれば、混乱していた俺の頭でも、だいたいの大筋は掴めてくる。
「つまり、俺は登場人物のひとりとして、ゲームの中に入ったってこと?」
「正確には、ゲームの世界観にかなり寄せた異世界よ」
「マリィと頑張って創ったのじゃー」
〝ゴッデス〟の世界を構成する数多の国々。
これらを、地理、文化、民族構成に至るまで、きっちり合うまで創り込んだのだと、双子の創造神は豪語した。
「じゃあ、ここの場所も、もしかして」
「そうなのじゃ。ナギサも見覚えがあるはずなのじゃ」
「ゴッデスの舞台、アレクトール帝国の首都イザーリスよ」
帝都イザーリス。
栄華を誇るアレクトール帝国の中心にして、皇帝のお城や、主人公も入学することになるエリエスワイズ学園などが所在する大都市である。
……なるほど、なるほど、俺もだんだん、順応できてきたぞ。
「で、俺たちはこの世界では、平民の兄妹ってところか」
この世界がゴッデス2に準拠というなら、そういうことだ。
「ちゃんと、それらしいロールプレイをしてよね」
「違和感は厳禁なのじゃー」
それを言ったら、ネリィの『妾』って一人称も……ってのは、言っちゃだめ?
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>ネリィの『妾』って一人称
神様だから問題ないのじゃ!
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