少しずつでも

周りの目

体験入部の練習を終えて実紅みくと共に家を出る葵結あむ。曲がり角で瑠那るなちゃんと合流をして公園に向かう。


家に帰る時間も勿体ないからなのか、ランドセルを背負ったままバスケットボールを投げ続けるキョンちゃん。その真剣の姿に声をかけにくい雰囲気すら漂っていた。


そしてキョンちゃんは振り向いた。

成瀬なるせさん、赤津あかつさん、実紅みくちゃん。ホントに来てくれてありがとう。一緒に練習しようね」

ツインテールが代名詞のキョンちゃんは練習している時真剣な顔からかわいい笑顔で話しかけてくれた。


思わず葵結あむがキョンちゃんに尋ねる。「どうして体験入部でお邪魔させてもらっている分際なのに優しく練習しようって言ってくれたの?実紅みくがいるから?」


「確かに実紅みくちゃんがかわいくて癒しの存在だけど。それだけじゃない。1人で練習しているとスローのフォームがどうなっているかどこかにカメラを置いてやらなきゃいけないの。自分でやるより人に教えるのって難しくて気づくこともあるからさ」


練習の時と話す時の表情のギャップが別人のように感じている。


瑠那るなちゃんがキョンちゃんに声をかける。

赤津あかつさんってよそよそしく感じだから瑠那るなちゃんとか瑠那るなって呼んでよ。私も成瀬なるせさんじゃなくて葵結あむちゃんとか葵結あむの方がいいかな」


タブレットでそれぞれ動画を撮ってフォームの確認をする。手の角度、離す位置か悪いとキョンちゃんは言っているが葵結あむ瑠那るなちゃんはサッパリ分からない。一緒に練習をしていても素人には変わりない。


実紅みくがキョンちゃんのランドセルをくわえて持ち上げようとするが持ち上がらない。注意をしようとランドセルを持ち上げるとずっしりと重たい。思わず何が入っているのか聞かずにはいられなかった。


「ランドセルの中身?私、学校に置き勉してなくて全教科書入れてタブレットも入れているよ。葵結あむちゃんと瑠那るなちゃんにどう見えているか分からないけど、そうしないと教科書を忘れたり、たまにタブレットの充電がなくて学校でしてることもあるよ」

ストイックで自分に厳しいキョンちゃんだが、天然でかわいい面もあってよかったと感じる。


とはいうもののランドセルを背負ってシュートが出来るというのは相当下半身が強くなければ出来ないだろうし、体幹も必要になる。葵結あむが同じことをしようとしてもムリ。


同じことが出来ないならば走り込みをしたり、神社の階段を駆け上がる方がよっぽど得策である。少しでもキョンちゃんに近くためには何をしたらいいのか聞いてみた。


なんだろうねと首を傾げる。葵結あむちゃん、瑠那るなちゃんラインやってたら教えて。フォームやリバウンド、フェイントを見てあげることは出来るよ。バスケットボール以外にも勉強や相談あればいつでも聞くからね。


タブレットを持っていなかったため、キョンちゃんにIDを聞いて家に帰った。葵結あむが送ると毎日実紅みくちゃんの写真か動画を送るようとのこと。


もし葵結あむがキョンちゃんの立場なら同じようにお願いをしていたかもと思いながら実紅みくの写真と動画を送った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る