相手を見る目

人間を超える

トライアル期間が終わって保護団体の人からサモエド、いや実紅みくの譲渡が決まった。


家の中ではスゴくわんぱくでずっとクルクルしていて、外にお散歩には毎日行っているがそれだけでは足りないと言わんばかりにずっと元気でいた。


せめて葵結あむがお散歩に行く時くらいはいつもより長くしようと思っていた。そうはいってもまだ小学生にもなっていないため遠くに行き過ぎるとパパやママが心配するし、迷子になる可能性もある。


しかし実紅みくの元気さには手に余るものがある。その両方を解決するためには同じ道をクルクルするとかそれくらいしか出来ない。


それでも実紅みくはとても嬉しそうな笑顔でいてくれて、寄ってきてくれる人には愛想良く振舞っていてかわいいと頭を撫でられるとスゴく嬉しそうで葵結あむまで嬉しくなる。


大きいのにかわいい笑顔で振舞う実紅みく、人懐っこいことはいいが誰にでも懐いて付いていかないかと心配してしまう程だ。


その旨をパパとママに伝えた葵結あむ

全ての人を疑ってかかるのもよくないし、その逆もしかり。同じ人間でさえこの人は悪い人なのかとずっと気にかけることは出来ない。とりあえず黒ずくめや人相の悪い人は吠えるように訓練をした。


人相が悪いとは言っても全てが悪いわけでもないからそこも難しいところだ。インターホンに写る人にもこういう人が危ないから吠えるようにと教え込んでいた。


毎日のように実紅みくに教え続けながらもお散歩をしている葵結あむやパパ、ママであった。これが功を奏したのかある出来事があった。


最近、テレビでも話題になっている闇バイトが家の近所で起きていた。怖いなと思いつつ元気いっぱいな実紅みくを家に閉じ込めておくのは出来ずいつものように散歩をさせた。


実紅みくを散歩していると明らかに挙動不審の人がいて、いつもは大人しいのに突然走り出していつも以上に吠え、黒ずくめの男は狼狽うろたえて逃げて行った。


そのタイミングで私服警官が取り押さえてこの件は終えた。何が何だか分からない葵結あむだったが家に帰ると警察官の人が待っていた。頭の中がハテナだった。


話を聞いているとどうやら実紅みくが吠えた人物は指名手配されている人物で散歩をしていた葵結あむとサモエドの実紅みく。別日に感謝状を渡したいからと警察に来るように言われた。


そして葵結あむは感謝状、サモエドの実紅みくはドックフードを提供されてテレビや新聞で報道されてから県内だけでなく全国から注目の的となってしまった。


葵結あむ自身、自分がそんなに有名になるとは思いなど全くなく愛犬のサモエドの実紅みくの顔を見ても不思議そうな顔をしていた。これから先、普通に実紅みくを散歩することが出来るのだろうか。



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