期限

この子のために

保護団体の人から先に連絡して欲しかったと言われてしまった成瀬家。サモエドはこの家に来てからというものの吠えたり物を噛んだりして壊したりすることはなかった。


そしてサモエドを見て家族でこう言った。

「こんなに優しくてかわいい子なのに、どうして木の棒をくわえて呼鈴を鳴らしたのだろうか。たしかに身体は大きいが誰かに構わず吠えたり噛み付いたりしないのにな……」


パパがそういうと葵結あむも同じことを思っていた。モフモフの感じはまるでぬいぐるみそのもので兄弟姉妹のいない葵結あむにとっては頼りがいのあるお兄ちゃんと甘えん坊のかわいい弟のような存在であった。


そのような存在のサモエドに名前は付けていない。ご飯の時が欲しい時やお散歩に行きたい時は葵結あむを含めた家族がしようとする前にサモエドの方からやってきてくれて態々わざわざ名前を呼ぶ必要がないくらい人懐っこい子である。


とはいえ今の状況で飼い主が出てくる可能性は極めて低いと言える。だから家族でサモエドに名前を付けようと言う話になった。


動物を飼ったことのないためにどんな名前を付けたらいいのか全く検討がつかない。こういう時はネットに頼ろうとひとまずネットで検索をする。


例えばポメラニアンから取ってポンちゃんやポメちゃんと付けている人と見て、ならばサモエドの名前からサモちゃんと名付けようかなとパパとママは言っていた。


すると葵結あむはこう言った。

サモエドの表情を見るとどうしてその名前なの?そのようなお顔していた。そもそもこの子は男の子なのか?女の子なのか?どっちなのか数週間、いや1ヶ月も経っているのにそれすら分からなかった。


いや、保護団体の人と動物病院に行った時に性別を伝えていたかもしれないがこの子が元気になればいいと思っていた。さて、この子の名前をどうしようかと改めて話していた。


葵結あむはひとまずサモエドに色んな名前を呼んでみた。見た目がとてもかわいく女の子の名前を付けようと思っていた。


ちひろ、ななみ、まりん、せな、かな、ひまり

だがどの名前を呼んでもサモエドは頭を傾けて表情を見ていまいちピンと来ない感じ。


葵結あむ実紅みく。そう読んだ時にサモエドはニコッと笑って葵結あむの顔をペロペロするようなかわいいことをする。


実紅みく、そう呼ぶとまるで自分が子犬かのように機敏きびんにクルクルしていた。


そのクルクルする姿はフィギュアスケートのトリプルアクセルくらいの勢いで回る。実紅みくのその姿が愛おしく、寝ている時以外はずっとやっているような感じだった。


このままサモエド、いや実紅みくと共に一緒に家族の一員として思っており、改めて迎え入れたいと感じつつトライアル期間が終わった。実紅みくがどうすれば幸せなのかな。

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