元の場所に

出来ること

突然やってきたサモエドを家に上げてから数時間、家族が帰ってきてなぜこのような状況になっているのか説明をした。


葵結あむとしてはこのまま家でサモエドを買いたいとパパとママに懇願こんがんをした。この時はまだ犬がかわいいから飼いたいという気持ちだけで押し通そうとしていた。


だが、パパの言葉にハッとした。

「いいか葵結あむ、動物を飼うと言うことは生命を飼うと言うこと。テレビや散歩しているかわいい部分だけでなく言うことを聞かないこともあれば病気をすることもあるし、人と同様に老いることもあるよ。だからそれを込みでちゃんと考えないと」


小学生に上がる前の葵結あむに取ってその言葉はスゴく胸に響いて動物がかわいいから飼いたいということだけを考えていた。


うつむいていた顔をしていた葵結あむにパパはこう切り出した。


とりあえず飼い主が見つかるまでとりあえず家で買おう。それで見つからなかったら保護団体に預けて新しい飼い主を探してもらおうという話が出た。


しかし、どうしてもこのサモエドを飼いたいという思いの葵結あむは諦められず飼い主が見つかるまでっていつまでなのかと食い下がらずに聞きまくった。


葵結あむの言う通り、とりあえずの曖昧あいまいでは納得しないだろうとならば1ヶ月という期間を決めつつもホントに飼い主が探しているかも知れないからと警察にも連絡を入れた。


交番に電話をしてその旨を伝えてから2週間が経っても何の音沙汰もない。毎日のようにバパに今日は警察から電話があったのかと尋ねる葵結あむ。このまま一緒に暮らせるようになればと内心考えていた。


葵結あむの願いが通じたかのように警察からは連絡がなく、ずっと一緒に暮らすのならば名前を付けた方がいい。その方が愛着が湧くし、家族として迎え入れる準備をしようと考えていた。


しかし、飼うとなっても悩みがある。

狂犬病きょうけんびょうワクチンは打っているのだろうか、外でハウスの中で飼うのか?それとも家の中でゲージなのか?食事はこれでいいのか?散歩はこれくらいでいいのか?


実際に家で飼っている訳でなく、保護している状態に近くて初めてのことでパパ、ママも探り探りで行っていた。


周りの親戚や知り合い、友達と見渡しても葵結あむも含めて誰も犬を飼っている人がおらず、頼りはネットだけ。保護団体やペットショップで聞こうとしたが分からないことだからけで何をどこから聞いたらいいのか分からない状態だった。


葵結あむとの期限の1ヶ月を迎えた。

警察からの電話がなく、ひとまず保護団体に電話をして事情を説明した。


電話で先にして欲しかったと溜息ためいきを付いて翌日、葵結あむの自宅に来ることになった。


まず、動物病院で狂犬病きょうけんびょうワクチン接種をしてひと通りの流れを説明を受けた。実はこのサモエドは保護犬として登録されていた。


今後の流れで、1ヶ月のトライアル期間を設けて様子を見ることになった。それはサモエドの為にも大事だからと強く言われた私たちだった。

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