第3話 始まりはゴミ袋、道筋は下水道

 ぼく、棒人間。

 なんだか、真一くんという人に出会った。

 人じゃなくて怪獣みたいだった。

 ぼくは必死に「逃がして!」といった。

 そしたら逃がしてくれたんだけど……

 あれ? ここどこ!?

 しばらくしたら頭の上に何かが降ってきた。あちちあちち……

 ところでさっきから聞こえる「灯油」って言葉なあに?


「もうそろそろあいつも灯油行きやな。焼かれて木っ端微塵にされるなぁ」


 なんちゅう意味や! まぁもともと微塵になった木っ端みたいな形だから、ゴミの山の中で咳き込んだぼくは、特に違和感を持たれることはなく、下水道をくぐっていった。


 茶色とグレーが混ざった色の下水道。天井を叩くとコンコンと音が響いた。


「モールス信号は……とんとん、とん。つー、つーつー。そのあと……」


 SOS、と叫んだほうがよっぽど効率がいいようにぼくには思えたが、ぼくはなんだかこの遊びが楽しくなって、こんこんこんと天井を叩いた。

 時々天井から、「コンクリートがこんこん言ってるね。うちも寿命かな」とか、「地鳴り——。未曾有の大災害の予兆だな! 早く皆の衆に知らせねば!」とか声が聞こえるけど、子供のぼくにはきっと無関係な話なんだろうさ。


 ぼくは、旅を続けていくうち、だんだん眠くなってきた。早くパイプを見つけ、この臭い部屋からはやく脱出したいという気持ちがだんだん強くなってきた。

 なぜだか、そうしないと、ぼくは寝付けないみたいだった。天井を見つめて、目を閉じる。天井がシンプルすぎてくだらないのだろうか。

 でも、ぼくには天井を変える術がない。

 ぼくは、まだ旅を続けている最中なのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る