第3話 電卓は冷徹

 まだが休日だった頃


 二人して青いビーチの楽園へ逃避行した。


 高い天井に据えられたゆっくりと回る天井扇を眺めながら……


 私はカレの優しい重みに、いっぱいの幸せを感じていた。


 迂闊だった……


 その逃避行の果てが


 義父母との同居になり……


 そこから逃れても、安普請で深々と冷え込む社宅のこんな情景だなんて……


 目の前に置かれた電卓と和希の学費、そして安住の地の為の頭金……今日のお昼も、実は暗澹たる気持ちに打ちのめされていた。


 それなのに……


 同じフレーズが口をつく。

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