第2話 残された残骸

 ノックをしても返事がない。


 昔やったように、お盆を指で支えて、空いた右手でドアを開けると


 和希が机の前に蹲ってうずくまっている。


「……寝てたの?」


 和希は両手をひざ掛けの中に入れたまま、こちらを見上げ曖昧に頷く。


「いくら部屋が冷えるからって! 暖め過ぎて眠くなったら何にもならないでしょ! 今日はもう十分遊んだんだから! しっかりしなさい!! この瞬間に他の子は頑張っているのよ!!」


 声を荒げるのは、この環境への八つ当たりだけでは無い。


 この子はきっと、寝てはいなかった……


 それは数日前、この子の下着に残された残骸……

 思わず下着に顔をくっつけ、臭いまで確認してしまった私……

 何となく、覚悟はしていたけれど……

 まだ小6の!

 しかもこんな大切な時期に!!……


 それが私の語気に火を点けている。


 さっきの夫の顔がダブる。

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