心の傷とともに生きる ~罪悪感、失敗、不安に向き合う旅~
星咲 紗和(ほしざき さわ)
第1話 過去の影 ~心を縛る記憶~
失敗すると、胸の奥がぎゅっと締め付けられるような感覚がする。そして心の中に、何度も繰り返された言葉が響く。「あいつは使えない」「お前なんて必要ない」。それは過去の記憶から湧き上がる声だと分かっていても、今の私を飲み込むほどの力を持っている。
子供のころ、クラスの中で目立たない存在だった私は、よくいじめの標的になった。おとなしい性格を揶揄されたり、失敗を面白おかしく取り上げられたり。そんな些細なことが積み重なり、「自分は何をやってもダメな人間だ」という思い込みが生まれてしまった。それは成長とともに薄れていくかと思っていたけれど、根は深いところに残り続けた。
大人になってからも、その傷は形を変えて私の心を揺らす。特に就職活動の時期、人事担当者から聞こえた何気ない一言が心をざわつかせた。「あなたの強みが見えにくいですね」。その瞬間、過去の記憶が一気に蘇り、私は頭の中で自分を責め続けた。「やっぱり私は使えない」「誰にも必要とされない存在だ」。そうした思いに囚われ、何かできることを必死に探して、自分の価値を証明しようとする自分がいた。
いじめや就職活動の経験が、私の中で「できないこと=人間としての価値の喪失」という考え方を形作ったのだと思う。それは、頭では間違いだと分かっているのに、心ではどうしても拭いきれない。
しかし、今振り返ると、あのころの自分に足りなかったのは、失敗やできないことを受け入れる「許し」だったのかもしれない。「できなくてもいい」「失敗しても大丈夫」という言葉を、自分にかけてあげることができなかったのだ。
過去の影は消えることはないかもしれない。それでも、その影を見つめ、そこに隠された痛みを受け入れることが、癒しへの第一歩だと思う。心の奥底にある傷を言葉にすることで、少しずつその重みを手放していけるのではないだろうか。
次回は、現在の自分がどのようにその影と向き合いながら生きているかを探っていきたいと思う。過去を過去のままにするのではなく、そこから学び、今をどう生きるかを考えるために。
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