第3話 異世界に来て最初の職業に配達員を選ぶのは流石に俺だけだろう。
俺が配達の仕事を始めて、今日で5日目になる。気がつけば、俺はこの「いいねポイントパワー」にすっかり魅了されていた。
何がすごいって、ステータスの成長を実感できるのが楽しくて仕方ない。
今の俺のステータスはこうだ。
ステータス
名前:天川 昇
種族:人間
職業:なし
レベル:10
次のLVアップまで:いいねポイント21
HP:20 / 20
MP:10 / 10
力:10
知力:10
敏捷:24
耐久:23
器用:10
運:10
いいねポイント:5
この5日間で、俺は毎日ひたすら走り回った。配達件数を増やすために、効率化に全力を尽くしてきたのだ。
まず、大きな成果の一つは道を覚えたことだ。最初は地図を片手に迷いながら配送していたが、今では複数の荷物をまとめて効率的に回れるルートを組み立てられるようになった。
「容量無限のマジックバックとかあればもっと楽になるんだろうけど・・・まあ、ないものは仕方ないか」
結局、俺はその分を走ることでカバーしている。
だが、最大の効率化できた原因はステータスの上昇だろう。
例えば、異世界に来たばかりの頃の敏捷が10だったとして、それが標準的な人間のスピードだとしたら、今の俺はその2倍以上の速さで走れる計算だ。そして、耐久を上げているおかげで疲労感がぐっと軽減されている。
以前は息を切らせながら仕事をしていたが、今では走りながら「お届け物です!」と笑顔で対応する余裕すらある。受取人に丁寧な対応を心がけることで、「ありがとう」と言ってもらえる機会も増え、いいねポイントの取りっぱぐれがほぼなくなった。
とはいえ、受取人が不在の場合はどうしようもない。それだけを避けるのも不自然だから、体面を保つためにその仕事も引き受けている。もちろん、このいいねポイントの話を他人にしたら「こいつ何言ってんの?」って顔をされるに決まっているので、黙っているしかないが。
金銭面について言えば、とりあえず生きていく基盤は整ったなという状態だ。だいたい銅貨200枚くらいの収入があった。つまり、これまでに約70件の配達をこなしたことになる。ロウさんとユフィさんには入街料や登録料を返し、ロウさんには昨日肉串を大量に差し入れした。返せる恩はすこしづつ返して行こうと思う。
宿代は1日あたり大銅貨1枚で1000円程度。耐久力が上がったおかげで翌日に疲労を引きずることもない。宿では水が飲み放題なので助かっているし、そこで買ったタオルで体を拭く生活を続けている。
そんな生活の中で、今の持ち金は銅貨80枚ほど。ギルドの貯蓄システムを活用して、手元に必要以上の金を持たないようにしている。物価は日本よりも安いのか、贅沢しなければ1件300円の配達でも暮らしていける程度には稼げる。
そして、今日の朝。ふと気づいたことがある。LV11に上がるためのいいねポイントが21になっていたのだ。
「やっぱり節目にはポイント数が跳ね上がる仕様か・・・」
LVアップの度に必要ポイントが1ずつ増えるだけなら、正直、俺はもっと早く異世界最強に近い存在になっていたかもしれない。この調整は仕方ないだろう。
また、職業欄を眺めてみると、そこには「配達員」という職業があった。
「なんてクリティカルな職業なんだ・・・」
解放に必要なポイントは30。今はまだLVアップに全力を注いでいるのでこの職業を解放する余裕はない。だが、おそらくLV20に達する頃には、必要ポイント数がさらに跳ね上がり、次のレベルアップより職業解放の方が効率的になるタイミングが来るだろう。
「その時まで我慢だな」
正直、配達員がどんな職業なのかめちゃくちゃ興味がある。だが、今は確実に速度とスタミナを強化できるLVアップを優先する方が賢明だろう。
こうして、俺の成長は着実に進んでいる。
5日目
「よし、今日も頑張るぞ!」
朝早くに宿を出て、配達所へ向かう。最近は体が軽くなってきたこともあって、朝の移動が楽だ。走りながらも、自分がどれだけ速くなったのかを実感している。
今日の配達件数はなんと25件。いいねポイントも23ポイントを稼ぐことができた。そして、LV11に到達!
ステータス
敏捷:25、耐久:25
街中を疾走していると、まるで見世物のように目で追われることもある。まあ、それだけ目立つ速さになっているんだろう。
とはいえ、最近少し気になっていたのは自分の匂いだ。配達で汗をかきまくるせいで、さすがに下着が気になる。洗ってはいるものの、どうしても臭いが染みついてきてしまうのだ。
「よし、思い切って新しい下着を買おう」
銅貨30枚を使って5枚のブリーフを購入。久々の新品の下着に、なんとも言えない安心感があった。
5日目の結果
配達件数:25件
いいねポイント:23ポイント
純利益:銅貨29枚
6日目
配達件数が30件に達した。いいねポイントは26ポイント。
LV12に到達し、ステータスもさらに成長した。
ステータス
敏捷:27、耐久:26
最近、ギルドで「配達屋」というあだ名がついているらしい。まあ間違ってはいない。なんなら誇ってもいいくらいだ。
今日は服も新調した。上下セットで銅貨35枚。走り回る身としては、動きやすさ重視の服を選んだ。これでまた快適に働けそうだ。
6日目の結果
配達件数:30件
いいねポイント:26ポイント
純利益:銅貨37枚
7日目
配達件数は32件、いいねポイント28を獲得。LV13に到達。
ステータス
敏捷:28、耐久:28
今日は嬉しい出来事があった。いつもの肉串屋さんで買おうとしたら、おじさんが「いつも頑張ってるな」と一本おまけしてくれたのだ。
「ありがとうございます!」
たった一本のおまけだが、その優しさが身にしみる。こういう日常の小さな幸せが、異世界での生活を支えてくれるんだな、と改めて感じた。
7日目の結果
配達件数:32件
いいねポイント:28ポイント
純利益:銅貨80枚
8日目
配達件数は35件、いいねポイント33。なんと今日はLVを2つも上げてLV15に到達!
ステータス
敏捷:31、耐久:31
今の俺の身体能力は明らかに日本にいた頃とは別次元だ。おそらくオリンピックの金メダリストと肩を並べられるくらい速く走れている気がする。それだけでなく、疲れを感じることもほとんどなくなった。ジャンプ力も確実に上がっているし、体が軽い。
8日目の結果
配達件数:35件
いいねポイント:33ポイント
純利益:銅貨85枚
9日目
配達件数は40件、いいねポイント36。LV16に到達。
ステータス
敏捷:33、耐久:32
体が羽のように軽い。だがその代償か、最近やたらと腹が減るようになった。肉串2本では全然足りない。今日は野菜スープを追加して食べることにしたが、それでも物足りないくらいだ。
成長の証だと思うしかないか。
9日目の結果
配達件数:40件
いいねポイント:36ポイント
純利益:銅貨90枚
10日目
配達件数は45件、いいねポイント40。LV17に到達。
ステータス
敏捷:34、耐久:34
原付くらいの速度で走り続けている感覚がある。日本にいたらどれくらいのスピードか測ってみたいが、そんなものはない。
今日は思い切り食べてみた。肉串3本にスープ、さらにパンを追加。腹いっぱいになると、なんだかとても幸せだ。
10日目の結果
配達件数:45件
いいねポイント:40ポイント
純利益:銅貨85枚
11日目
配達件数45件、いいねポイント38。LV19に到達。
ステータス
敏捷:37、耐久:37
ついに目標のLV20が目前に迫った。お金も溜まってきたが、宿を変える気にはなれない。節約第一。
今日はとうとう配達する荷物が尽きた。バルデルさんも喜んでいたし、俺も嬉しい。
11日目の結果
配達件数:45件
いいねポイント:38ポイント
純利益:銅貨100枚
12日目
配達件数43件、いいねポイント37。ついにLV20に到達!
ステータス
敏捷:39、耐久:38
そして、LV21までの必要いいねポイントは41ポイントと表示されている。
次のレベルアップよりも職業解放の方がポイントが少なくなった。
俺の推察は間違っていなかったようだ。
仕事に関しては、荷物を落とさないようにパルクールじみた動作をしているせいか、住民から「がんばれー!」と声をかけられることが増えた。なんだか目立つ存在になってきている気がする。
今日は珍しくスラム街のほうへ配達に行った。物乞いをしている子供たちを見かけ、なんとも言えない気持ちになる。
「お腹空くよな・・・俺も同じだったもんな」
そんな気持ちを胸に抱えつつも、俺は仕事を全うした。そして、ついに目標としていたLV20に到達。
「明日頑張れば、いよいよ職業解放ができる!」
気合いを入れて、明日の仕事に備える。
12日目の結果
配達件数:43件
いいねポイント:37ポイント
純利益:銅貨95枚
配達の仕事を始めてから、今日で13日目になる。
件数が安定してきて、今日は40件。どうやらこれが現在の限界らしい。いいねポイントは38ポイントを稼ぎ出せたが、そろそろ頭打ち感を感じる。
宿に戻ると、真っ先に冷たい水を使って体を清める。配達仕事のあとの汗を流す時間は、いつしか一日の楽しみの一つになっていた。冷たい水が肌を刺す感覚にも、もう慣れた。
さっぱりしたところで、俺は肉串を頬張りながらステータス画面を開く。
ステータス
名前:天川 昇
種族:人間
職業:なし
レベル:20
次のLVアップまで:いいねポイント41
HP:30 / 30
MP:15 / 15
力:10
知力:10
敏捷:39
耐久:38
器用:10
運:10
いいねポイント:49
LVアップもできるけど、今はそのタイミングじゃないな
俺の目標は、ついに溜めたこの49いいねポイントを使い、『配達員』という職業を解放することだ。
ステータス画面の職業タブを開き、『配達員』の欄を選択。画面には解放ボタンが表示されている。
ログ:
配達員の職業を解放しました。職業をセットしてください。
俺は画面をタップし、職業欄に新たに表示された「職業セット」ボタンを押した。
ログ:
職業がセットされました。
画面を確認すると、職業の欄が「配達員」に変わっている。そして、さらなるログが表示された。
ログ:
職業がセットされましたのでスキルをアンロックします。
「スキル?」
新たに増えたスキルタブを開くと、そこにはズラリと並んだスキルの一覧が表示されていた。
【配達員】スキル一覧
【軽やかな足取り】(パッシブ/5ポイント)
移動速度が向上する(敏捷+3)。
【荷物整理術】(パッシブ/5ポイント)
荷物をきれいに整理できるようになり、マジックバック内のスペースを20%拡張する。
【簡易マジックバック】(パッシブ/10ポイント)
荷物を収納できる「簡易マジックバック」を取得。容量は大きなリュック程度で、重量50%カット効果がつく。
【お届けスマイル】(パッシブ/10ポイント)
配達時の対応がさらに丁寧になり、受取人が「ありがとう」と言いやすくなる。いいねポイントの獲得確率が微増。
【タフネスラン】(パッシブ/10ポイント)
移動時の疲労を軽減する(耐久+2)。
【配達ルート最適化】(アクティブ/15ポイント)
最適なルートを表示する。複数の配達先がある場合、自動的に効率の良い順番で道案内してくれる。
【荷物保護の心得】(パッシブ/20ポイント)
配達中に荷物が破損するリスクが減少する(+ダメージ耐性付与)。荒い道や悪天候でも安心。
【改良マジックバック】(パッシブ/25ポイント)
「簡易マジックバック」をアップグレード。容量が2倍になり、重量が完全に無視される。さらに、中の荷物が破損しにくくなる。
【疲労軽減術】(パッシブ/20ポイント)
日常的な動作による疲労をさらに軽減(耐久+5)。
【トラブルシューティング】(アクティブ/25ポイント)
配達先で発生するトラブル(例えば、不在の受取人や荷物の取り違え)を解決する力が向上する。失敗時のペナルティを回避しやすくなる。
【神速の配送】(パッシブ/30ポイント)
全身能力が向上する(敏捷+10)。
【万能マジックバック】(パッシブ/50ポイント)
「改良マジックバック」をさらに強化。容量は実質無限になり、中の荷物がどんな衝撃を受けても破損しない。
【配達の達人】(アクティブ/40ポイント)
使用すると一定時間、配達能力が大幅に上昇(敏捷+20、耐久+15、運+5)。
【地域住民の信頼】(パッシブ/50ポイント)
配達エリアの住民からの信頼が大幅に向上。
【配達員マスター】(パッシブ/100ポイント)
配達員のスキルをすべて習得し、熟練の配達員に到達した証。上位職の条件が解放される。
「うおおおおお!きた!マジックバックきたーーー!」
俺は迷わず【簡易マジックバック】を解放した。
すると、虚空から小さなリュックのようなものが現れた。鞄の中を覗くと暗闇が広がり、手持ちのパンを一つ入れてみる。
スキルタブの「マジックバック」項目を見ると、パンがアイコンとして表示され、容量が「1/50」と表記されていた。
「つまりパンなら50個分入るってことか。悪くない!」
便利すぎる機能に感動しながらも、試しに職業を外してみた。すると、マジックバックも一緒に消えてしまう。
「なるほどね。職業をセットしてないと使えないのか」
再び『配達員』をセットすると、マジックバックは復活し、中に入れておいたパンもそのまま残っていた。
「あるんかい!でもこれ、他の職業にしても一時的にマジックバックを収納できるって考えると相当便利だよな」
さらに残ったポイントで【荷物整理術】も解放した。これで効率化がさらに進むはずだ。もうポイントが残っていないのでこれ以上のスキル習得はできないが、まずは第一歩として十分だ。
今日の終わりにステータスを再確認し、満足げに肉串を頬張る。明日からが本当のスタートだ。
ステータス(13日目終了時)
名前:天川 昇
種族:人間
職業:配達員
レベル:20
次のLVアップまで:いいねポイント41
HP:30 / 30
MP:15 / 15
力:10
知力:10
敏捷:39
耐久:38
器用:10
運:10
いいねポイント:4
スキル:
【簡易マジックバック】
【荷物整理術】
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