第16話:雪の中の逃亡者
美羽は風人の居室内に隠れていた。
管理小屋の玄関付近を映す監視カメラの映像で訪問者たちの姿を見た風人に、隠れているよう指示されたからだ。
昨日2人で帰宅した後、保護部屋から人間用の部屋に引っ越しも済ませている。
新たに美羽に与えられた部屋は客室で、寝具は揃っていた。
美羽は独り寝が寂しくて真夜中に風人のベッドに潜り込み、朝起きた彼を驚かせた後、急な訪問者がきて現在に至る。
「美羽、窓から逃げるよ」
風人が音もなく扉を開けて室内に滑り込んでくると、布団の中に隠れている美羽に囁く。
美羽は頷き、風人に手を引かれて布団から出て窓に歩み寄り、屋外へ脱出した。
「僕が囮になる。美羽は足跡を残さないように飛んで逃げろ」
「嫌。風人を抱いて飛べるわ。一緒に逃げて」
雪の上を走れば足跡が残る。
風人は美羽に白鳥になって逃げるように指示するが、美羽は首を横に振り、乙女の姿のまま大きな白い翼を広げた。
天使を思わせる容姿に変わった美羽に抱き締められ、風人は初めて空を飛翔した。
羽毛のような綿雪が舞う。
空は青くはないけれど、果てしなくどこまでも広がっている。
風人が護る森は2人の上昇とともに小さくなって、ジオラマのように見える。
美羽の純白の両翼は大きく力強く羽ばたいて、2人を遠くへ運んでいった。
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