第15話:訪問者たち

「君が保護しているものを迎えに来た。こちらに引き渡しなさい」


 翌朝。

 管理小屋を訪れた兵士たちは、前置きもなしに言う。


「今は何も保護していませんが?」


 風人は兵士たちが求めるものが何か察したが、敢えて分からないふりをした。

 嘘はついていない。

 美羽はもう保護動物ではなく、風人の家族として迎え入れたのだから。


「君が昨日見たと言っていた白鳥のことだ。ここにいるのは分かっている。早く連れてきなさい」


 兵士の後ろから出てきた小柄な白衣の男が、威圧的に言う。

 廃棄する筈の白鳥を逃したことが皇帝にバレるのを避けるため、兵士たちと開発者たちは結託し、秘密裏に処理しようとしている。


「白鳥はいませんよ」


 風人は平静を装って答える。

 美羽は昨日乙女に変身して、今もそのままだ。

 白鳥がいないというのは半分くらいは嘘ではない。


 兵士たちと開発者の男は顔を見合わせた。

 彼等は風人が白鳥を匿っていると確信し、行動を起こす。


「中を検めさせてもらうぞ」


 言うと、兵士たちと白衣の男は風人を押し退けて小屋の中に押し入った。

 管理小屋は帝国政府所有の建物なので、事前に見てきた平面図から保護部屋の場所は分かっている。


「いないぞ?」

「よく探せ。近くにいる筈だ」


 兵士たちと白衣の男は大型鳥類の保護部屋に入ってみたが、白鳥はいない。

 そこはまるで使っていないかのように片付いていた。

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