第6話:背中と白鳥

 保護開始から1週間ほど経つ頃。

 いつものようにペットシーツの上に餌が入った食器を置く風人。

 食べる姿を見ないように背中を向けている後ろから、カツカツとステンレス食器に嘴が当たる音が聞こえる。

 そろそろ食べ終わる頃かな? と思ったとき、トンッと何かが背中に当たった。


「ん?」


 何だろうと思いつつ振り返る風人。

 その背中に、白鳥が身体を預けるようにもたれかかっている。


「どうした?」


 問いかけても、白鳥は答えない。

 ただ静かに、風人の背中に寄り添っている。


「もしかして、おかわりの催促かな?」


 回復が進んで食欲増進したのかもしれない。

 おかわりを持ってこようと立ち上がりかける風人のシャツの裾を、白鳥はまるで引き止めるようにパクッと咥えた。


「えっと……違うのかな?」


 どうやら、食べ物の催促ではないらしい。

 風人が床に座ると、白鳥はまた背中に身を寄せてきた。


(もしかして、甘えてる?)


 臆病な動物が懐き始めるとき、最初は人の背中に身を寄せてくることがある。

 白鳥の行動は、それによく似ていた。


(飼われていた子だし、本当は甘えん坊なのかもしれないな)


 風人は白鳥の気が済むまで、その場から去らずに傍にいてあげることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る