第4話:白鳥の食べ物

 白鳥は草食性と思われがちだが、実は雑食性だ。

 水草や水中の藻、落ち穂、牧草、海藻などを食べるほか、昆虫や貝、甲殻類なども食べる。

 動物園などでは飼育している白鳥にカモ用ペレット、キャベツ、 パンなどを与えている。

 森林保護官の管理小屋には、様々な生き物用の餌が常備されていた。


(これとこれと、これも持っていってみるか)


 風人は白鳥が好みそうな物を選び、複数の食べ物を持って保護部屋へと歩いていく。

 そっと扉を開けて部屋に入ると、白鳥は部屋の隅で縮こまっていた。


「ごはんだよ」


 穏やかな口調で話しかけても、白鳥は縮こまったまま反応しない。

 風人はステンレス皿に入れたカモ用ペレットとパンを、寝床の近くに置いてみた。


「いじめたりしないから、怖がらないで」


 再び話しかけても反応は無い。

 白鳥はまるで置物のように動かず固まっている。


「怪我が治ったら自由にしてあげるから、とりあえずこれ食べてくれないかな?」


 言葉が通じないであろうことは承知の上、風人は優しく話しかける。

 それでも白鳥は無反応なので、餌を置いたまま静かに部屋の外へ出た。

 少しでも食べてくれますように。

 そう願いながら、風人は保護部屋の向かいにある自分の寝室へと移動した。

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