(8)力と技
アルマの魔法の腕前には驚かされっぱなしだ。俺の炎魔法を真似るだけじゃなく、そこからさらに応用してくるなんて、さすが七不思議を踏破した実力者だな。
杖を天高く掲げたアルマの先端に光が集まり始める。
「光よ、我が掌に宿れ。その輝きで道を穿ち、闇を貫け!
初級魔法だと?一瞬疑問に思ったが、すぐにその意図に気づく。アルマは無数の光球を生み出し、アイゼン部長の頭上に配置していく。初級魔法を積み重ねて上級魔法並みの効果を狙うつもりだ――応用力、ハンパねえな。
無数の光球が一直線に部長へ突き進む。
「これで終わりです!」
アルマの自信に満ちた声が響く。
だが、アイゼン部長はすぐに拳を地面に叩きつけた。「甘いな!大地の精霊よ、我が身を包みて鋼の守護と成れ!
瞬時に全身を覆う大地の鎧が現れ、光球を弾き返していく。微動だにしないその防御力に、俺は思わず舌打ちした。
「私の魔法じゃ敵わない。でも、勝つだけなら。」
アルマが静かに呟き、杖を再び振る。
「ヴィクター先輩、お借りします!天上に宿る風よ、荒々しき嵐の意志をその身に宿し、鋼をも凌ぐ槍と化せ。刃を秘めし風の息吹よ、果て無き虚空へと貫き進め
鋭い風の槍が生まれ、凄まじいスピードでアイゼン部長に向かう――と思いきや、槍は彼女の足元の土を大きくえぐった。衝撃でバランスを崩した部長は、そのまま膝をついてしまう。
「勝者!アルルマーニュ・デュフォンマルさん!」
カティアが興奮気味に叫ぶ。その声で場がようやく静寂から解放された。
膝をついたアイゼン部長は、しばらく黙っていたが、やがて静かに立ち上がり言った。
「見事だ。力ではなく技で私を破るとはな。発言は撤回しよう。共同研究にも協力させてもらおう。」
その表情には悔しさよりも、どこか満足げな色が浮かんでいる。
「ありがとうございます。」
アルマが深々と頭を下げる。その姿は、堂々としていながらも謙虚そのものだった。
やりやがったな、アルマ――。
俺は心の中でガッツポーズを決めながら、彼女を少し見直している自分に気づいた。
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