(3)鉱石の反応

 グラヴァンス教員が俺たちを案内しながら歩き出す。

「最初は鉱石研究部に置こうと思ったんだが、あれには厄介な特性があってな。特別に鉱石試験室を借りたんだ」


 厄介な特性って…もう嫌な予感しかしねえ。


「試験室って何?」

 アルマが聞くと、カティアが食い気味に答える。

「鉱石の特性を調べる部屋だよ!硬さとかマナの量とか!でね、あの赤黒いやつ、相当ヤバいんだよ!」


 軽いノリだけど、妙に胸がざわつく。


「オーヴィル君、煽りすぎだ」

 教員が咳払いしながら扉を開く。

「見れば早いだろう」


 中に入ると、空気が変わった。真ん中に鎮座する赤黒い立方体が、圧倒的な存在感を放っている。息苦しくなるほどだ。


「これが例の鉱石だ」

 教員が言うと、カティアが近づき、銀色の粉を振りかけた。何をする気だ?


「おい、それ何してんだ?」

 俺が尋ねた瞬間、鉱石が光り始める。銀の粉が吸い込まれるように消えていく。


「鉱石が、鉱石を食った…?」

 アルマが驚いた声を上げる。俺も言葉を失う。


「素材同士が結合したのか、マナに分解されたのか、まだ分からない。ただ、特定の七種類の鉱石にしか反応しないことが分かった」

 教員が腕を組みながら続ける。


「聞いて!ここからがあたしの実験結果!」

 カティアがテンション高く話し出す。


「反応したのは、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイト。あと、ソウルスチール、オーロラストーン、ルナメタル、アストラリウム!珍しいやつばっかり!」


「問題はここからだ」

 教員が険しい表情で言う。


「少量では観測ができない。一定量の鉱石を用意しなければ研究は進まないんだ。学院にもストックはあるが、それを使い切ると授業や他の研究に支障が出る。つまり、新たに集める必要がある」


 七つの鉱石を揃えるだと?聞くだけで面倒な仕事の予感しかしない。だけど、俺は視線をもう一度赤黒い鉱石に向けた。あいつがただの石っころじゃないのは、誰が見ても明らかだ。もう共同研究するって言っちまったし、嫌でも関わる羽目になりそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る