(4)ミスリルの在り処

 七つの鉱石を集めろ、ねぇ。と俺がため息をついていると、横でカティアが妙に楽しそうな顔をしてやがる。こいつ何考えてんだ?


「先生、授業で使わない鉱石なら、学院にあるやつ勝手に使っちゃダメですか?」


 グラヴァンス教員が即座に釘を刺す。

「ああ、まあな。ただし、装飾品を剥がしてくるなんてことは絶対ダメだぞ」


「そんなことしませんってば!」

 カティアが頬を膨らませるが、どうにも怪しい。


 教員は苦笑いしながら続けた。

「それで、どうするつもりなんだ?」


「ほら、鉱石研究部にあるでっかいミスリルの塊!あれ使えばいいじゃないですか!」

 自信満々に胸を張るカティアの言葉に、俺も「ああ、あれか」と思い出す。確か、伝説的な先輩が掘り当てたとかで、研究部の誇りとして飾られてたやつだ。


 グラヴァンス教員は渋い顔をして言った。

「確かにあるな。でも、あれは研究部の象徴みたいなもので、勝手に使うのは無理だろう」


「だから交渉するんですよ!」

 カティアは勢いよく即答すると、俺とアルマの手を掴んで引っ張り出した。


「行くよ!三人ならなんとかなるって!」


 唐突な展開に俺は呆れつつも、仕方なく引っ張られるまま歩き始める。グラヴァンス教員はため息をつきながら肩をすくめた。

「オーヴィル君の勢いは時々役に立つからな。健闘を祈るよ」


 アルマが引かれながら困ったように言う。

「ちょ、ちょっと待ってください!もう少し段取りを考えたほうが…」


 俺は片眉を上げながら言った。

「段取りとか、今さら無理だろ。行くぞ」


 廊下を駆けるカティアの声が響く。

「部長はカタブツだけど、三人で説得すればいけるって!私に任せといて!」


 その勢いに押されながらも、俺は内心ぼやく。

 ――ほんと、大丈夫かよ…。


 だが、引き返すわけにもいかねえし、どうせやるなら全力でやるしかねえ。俺は覚悟を決めてカティアの背中を追った。

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