(2)護衛の初陣
旅支度を整え、向かったのは王立魔法学院。同じ王都の中だけど、卒業して三カ月も経つと少し懐かしい気分になる。
学院では魔法の訓練があちこちで行われていて、中心にそびえるマナの塔が相変わらず圧倒的な存在感を放っている。卒業後の噂話が頭をよぎる――たった三カ月で学院の七不思議を踏破したヤツらがいるらしい。その中に、十三歳の特待生がいたとか。正直、どんなヤツか興味が湧く。
そんなことを考えつつ受付を済ませ、学院長の部屋に向かった。扉を開けると、白髭の学院長と金髪碧眼の少女が待っていた。少女が握る短い白銀の杖が目に入る。俺の拳くらいしかない。それが妙に印象に残った。
「学院長、お久しぶりです。今回の護衛任務ってのは…こちらの…?」
ぎこちない声が出てしまう。緊張してるのがバレバレだ。
「ふぉっふぉっふぉ、ライナス君、堅苦しいのはやめたまえ。君は冒険者といっても、まだ卒業したばかりじゃろう?」
学院長の軽い笑いで、少し肩の力が抜けた。聞いた話はこうだ――この少女を北国の魔術学院の採掘行事に送り届け、無事に連れ帰る護衛任務らしい。北国は夏だけ雪が解ける特別な地域で、そこで鉱石研究が行われているという。
「なるほど、それで俺に依頼を?」
「そうじゃ。寒い北国には火を操れる君が最適じゃろう。それに危険なモンスターも少ないし、新米の君にちょうど良い任務じゃ。」
「ふーん、なるほどね。まあ、なんでも来いです。俺が全部燃やしてやりますよ。」
軽く人差し指に炎を灯してみせる。学院長は微笑みながら護衛対象を紹介した。
「彼女は一年生のアルルマーニュ・デュフォンマル君じゃ。特待生で、あの七不思議を踏破した一員でもある。」
「おお、噂の――。でもそれなら俺、いらなくないですか?」
思わず率直な感想が口をついた。
「そうもいかん。彼女は領主の娘でもあるんじゃ。何かあれば学院の責任問題になる。君には万全の護衛を期待しておる。」
金髪碧眼の少女――アルルマーニュはしっかりと頭を下げた。「アーデント様、護衛任務、どうぞよろしくお願いします!」
「堅苦しいのは嫌いだ。ライナスでいい。それに、その名前、長いな。アルル?デュフォン?もっと呼びやすいのにしてくれ。」
「では、アルマと呼んでください。ライナスさん、よろしくお願いします!」
学院長が「良き旅路を」と見送る中、俺とアルマは学院前に待機していた馬車に乗り込んだ。北国への旅路が、ここから始まる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます