第2話 粘土のことわからない人に粘土が何か伝えるって難しいよね。
――さて、スキル名を言ってから結構時間が経ったぞ。
いつまでキリッとした顔で決めてるんだダイジン。
ムンク顔ももういいよペペロン。
俺も何となくニヤけ顔を崩しづらいじゃないか……。
――ダメだな。
これは俺が動かないと一生このままだ。
勇気を出して俺は口火を切った。
「万能粘土っていったいどんなスキルなんだ?」
「・・・」
――えっ?
まだ固まってるんですけど。
今、喋ったよね俺?無視?
まさか俺のスキルって時間止めるやつ?粘土なのに?
……あ、違うわ、まばたきしてるもん。
じゃあ何なの?イライラしてきたわー。
「おいっ!!何か言えよっ!!!」
思わず声を荒げてしまった。
二人が「ビクッ!」と反応しペペロンが何かモゴモゴ言い出した。
「……えーと。このリアクションを取った手前、言い出しづらかったんだけど万能粘土ってスキル知らんかったのよワシ」
……なるほど、知ったかぶりしちゃったわけね。
うん、責めないよ。だって俺もたまーにあるもん。
友達が楽しそうに話してるときとか、知らない言葉が出てきても流れを止めないように、さも知ってるかのようなリアクションしちゃうこと。
全然おーけー!俺はニコリと微笑んだ。
さて、次はダイジンさん。
アナタはどういう理由で黙っていたんだい?
笑顔のままダイジンの方を向くと、のそ〜っと手を挙げた。
「実はワタクシもこのスキル効果を存じ上げておらず「ハァァァァ!?おめーは三ツ星鑑定士だろうがよ!!スキルの効果ぐらい見れろや!!」
「いや……スキルの効果まで見られるのは四ツ星からで「三ツ星がMAXじゃねーのかよ!!あの紹介の仕方だと勘違いしちまうだろうがよ!!あとついでに言っとくけど肩力って何だよ!!魔力ってことで無理やり納得しようとしたけどぜってーちげーよな!!あんっ!!?」
……ふーっ。ガラにもなく怒鳴っちった反省ぺこり。
やべ、ダイジンがガタガタ震えちゃってる。どうしよ。
この空気どうにかしてペペロン。
王様なんでしょ?
―――――――――――――――――――――――
ペペロンのフォローなどあるはずも無く、その後もしばらく気まずい空気が流れたが、何やかんや少しずつ皆が話出しランチの時間にはすっかり空気は和んでいた。
そして俺達三人は城から出された豪華な唐辛子料理の数々を食べながら色々なことを聞いた。
――ここモッツァレラ王国の現状。
鑑定士は九ツ星まであること。
何故こんなにも激辛料理ばかり食わされるのか。
などなど、汗だくになりながらこの世界についての有意義なトークが続いた。
――そして昼食の時間も終わり俺は別の部屋に案内された。
「……え、何で??」
気がつくと俺は牢屋の中にいた。
さっきまで和気あいあいとお話をしていたのに何故?
味噌汁を絨毯にぶち撒けたから?
王様に対してタメ口きいたから?
ダイジンにブチ切れたから?
激辛スープが辛すぎて王様の顔に噴射しちゃったから?
……あれ?
落ち着いて考えたら俺、王族相手に結構無礼なことしちゃってたかも……。
終わった……。
俺の異世界生活ここで終わった……。
やだ。
やだやだやだやだやだーー!!
「すいませんでした!!」
俺は全力で謝った。
頭を地面につけて全力で謝った。
そのまま姿勢は変えずに目線だけで二人の顔をチラリ
キョトンとしている。
「あ、いや〜。これからスキルの検証しようと思ってな。ここが一番頑丈な部屋だし壊れても問題無いからそこに入ってもらっただけなんじゃけど……」
……はは、そーゆーことね了解!
「おーけー!!じゃあ早速スキルを使うぞ!!万能粘土!!!!」
また気まずくなりそうなパターンなので土下座状態から飛び上がり元気にスキルを使った。
「ポンッ!」
俺の手のひらに長方形の真っ白な物体が出現した!
「「何だそりゃーー!!!」」
ペペロンとダイジン驚いている。
でもそんなに驚くところか?
これは粘土。色的に紙粘土だな。
触った感じも間違いなく粘土。
予想通りというかスキル名聞いた段階で何となく粘土が出てくるのは想像できるだろう。
能力も多分これで作った物を本物にできるとかそんな感じのスキル。
わかってたなら、さっきキレるなって話だと思うがアレはノリだ。
「粘土だよほら」
俺はコネコネしてみせた。
「「ネンドって何?」」
二人は声を揃えた。
……え?
「えーと、ほらこうやって形を変えてさ――」
――ピンときていない顔だ……。
マジかー。
この世界粘土無いのかー。
あったら子供でも知ってるもんねー。
粘土知らない人に粘土を説明するのって意外と難しいな。
おもちゃ?なのかなー?
「それで形を変えてどうなるんじゃ?」
どうなる??えーっと。
そう聞かれるとどうもならなくね?
「なんというか例えばこう丸めてね――ほら面白い」
「丸めるのが面白い?と言うと?」
と言うと?
何がと言うとなんだろう?
「じゃあこれ何に見えます?」
俺はウサギを作った。
「何にも見えないけど?で?」
下手すぎたようだ。
そういえば俺、手先不器用なんだった。
美術の成績も最悪で友達に一時期ピカソって呼ばれたんだった。
「お主のスキルってそれ出すだけ?」
ヤバイ!!
ペペロンの目が死んでいる。
何とかこのスキルの凄さを証明しなければ!
じゃないとこのまま鍵を開けてもらえないかも!!!
「ちょ、ちょっと待ってもらっていいですか違うんです」
ヤバイヤバイ!!
早く何か作らなければ!!
俺の技術でも作れそうなやつを!!!
何がいい?頭を回転させろ!!
……そうだ粘土の定番といえばあれだ!
よし、行くぞ!!!
「おらぁぁぁ!!」
俺は一心不乱に紙粘土を捏ねた。
「よし!完成!!」
そういうと右手に筆が現れた。
「色も塗るのー?!!」
めんどくせぇーー!!
今絶体絶命で急いでんのに時間のかかる行程させるなよ!
全然万能じゃねーな!!
色はどうやって選ぶの?
唱えればいい?
「赤!」
よし、予想通り!
筆に色がついたぜ!!!
さぁこうやってシャシャーっと塗って――よし
「今度こそ完成!!」
すると色を塗った紙粘土が光出した!!!
「おおぉぉー!!」
ペペロンの目も光出した!!
「さあ召し上がれ!!」
ペペロンは恐る恐る俺の手から完成品を受け取り、口にした。
「うむ、これは美味!見事な桃じゃ!!」
…………リンゴだもん。
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