第4話 捕食機能追加

 鬱蒼と茂った木々。

 まるで化け物のようにうねうねと草が伸びている。

 夕方近く。

 太陽は沈み、肌を凍り付かせる程の季節。

 冒険者は宿屋に戻る時間帯だ。


 だが、クロルの肌は寒さに耐性がついている。

 それもシャツとズボンだけで、肌を晒しているのにも関わらずであった。


 ランサーラビット20体のターゲットを見つけるのにさほど時間を要しなかった。

 ランサーラビットの群れを発見。


 人間が使用する槍程の長さの角があるウサギ。

 それがこちらに気付くと、突撃してくる。

 それも30羽近くだ。


 クロルはブラッドソードからエンシェントソードに切替わったそれを構えると。

 剣術の型もなく、ただ振り上げただけであった。

 それだけで、5羽のランサーラビットが切り刻まれている。

 25羽程のランサーラビットが距離を取るが。

 

 エンシェントソードから発せられる光。

 ブラッドソードが闇なら、今のエンシェントソードは光そのものだった。


 眩しい光が、ランサーラビットの視界を覆い。

 

 ただ振り上げるだけの工程を行いながらも、そこには剣術も何も無かった。

 ひたすらの振り回しで、斬撃が飛び。

 全てのランサーラビットを破壊しつくしていた。


 バウンティーブックから報酬を受け取る。

 経験値の石1個と箱が1個。

 レベルが5になり、次に箱を開けると。


【ゴッド:捕食ノルマ機能】が追加された。


【捕食ノルマ機能は、喰らった数に応じてスキルがもらえる。そんな便利機能だな、脳内に表示されてるはずだぜ?】


 脳内に表示されているのは、無限に広がるモンスター図鑑だった。

 ほとんどが???で、ランサーラビットを見つけると、30羽で【槍撃スキル】というのを習得出来るらしい。


 ちょうど30羽の死体が転がっている。


 ごくりと生唾を飲み込む。

 モンスターを食らうのは冒険者として当たり前の行事。

 ドラゴンの肉等喰らえば健康満点と言われている程で、市場でやり取りされている程だ。


「だが、30羽も食えるだろうか」


【安心しろ、捕食機能で胃袋が無限になってるはずだ】


「それって満腹を感じないのでは」


【いんやー満腹だけど限界がなくなるだけさ】


「はは、それは非情に・・・・・・」


 ランサーラビットの肉を生で食う訳にはいかず。

 枝を集め、火打石を使う。

 鍛冶場から出る時に火打石は持参した。


 こつこつと音を響かせながら、焚火を作ると。

 肉を焼いてひたすら食べた。

 確かに、満腹にはなるが、限界がない。

 ある意味幸せな工程なのかもしれない。


「ふぅ、食った」


 一応【槍撃スキル】を習得したけど。

 槍を持っていない。

 エンシェントソードを構えて槍撃を発動させると。

 物凄い連撃の槍撃が開始されていた。

 剣だけど槍の方で攻撃していく。

 まるで達人のそれなのだが、全てが自動で動いている。


 まるで人形になったかのようで気持ち悪い。


【慣れると自分で操作出来るさ】


「そうだと良いんですが・・・・・・」


 それから、バウンティーブックに表示されている。E級モンスター狩りが開始された。


 プラントネス50体討伐。

 経験値の石1個 レベル6になる。

 箱1個獲得=【レア:氷結の槍】

 捕食30体分=【光合成:太陽からエネルギーを得る】

 捕食50体分=【自己再生:回復し続ける】


 E級のランサーラビットとプラントネスの討伐が終わり。

 次はD級のモンスター狩りを始める。

 バウンティーブックに表示されているのは。


【ゴブリン】【リザードマン】【オーク】


「これって、食えるのか?」


 ゴブリン10体を討伐するのにかかった時間10分。

 リザードマン20体を討伐するのにかかった時間20分。

 オーク30体を討伐するのにかかった時間30分。


 ゴブリンの丸焼きを捕食する。こんがりと焼けて美味。

 リザードマンの丸焼きを捕食する。魚の味がして美味しい。

 オークの丸焼きを捕食する。とても油が乗っている。


 バウンティークエストの報酬。

 経験値の石10個

 箱3個


 レベルが16になる。

 1個目の箱=【マジック:死霊の杖】

 2個目の箱=【エピック:変装マント】

 3個目の箱=【レジェンド:キングナイト】


【死霊の杖:使者を蘇らせて使役する】

【変装マント:マントを着ている間、創造した人間や生き物に変装する】

【キングナイト:滅びた王国の王騎士を従える事が出来る】


 ゴブリン×10捕食して得たスキル【指揮者:信頼または支配下の物に遠隔指揮を与える】

 リザードマン×20捕食して得たスキル【無呼吸:水の中で長時間呼吸しないで生きられる】

 オーク×30捕食して得たスキル【根性:筋肉が増強される】


 おそらく、これだけ強くなるには、とてつもない修行と日数が必用なのかもしれない。

 クロルはその境地に達そうとしている。

 それもたった1日のうちの13時間程度で。


 筋骨たくましくなり、首元もがっしりしている。

 なよっとしていて、真面目で、優しい鍛冶職人の姿はそこにはなかった。


 どこぞの狂戦士、または熟練の冒険者がそこにいた。


 がっしりとした肉体を支えている服装はシャツとズボン。

 それもはちきれそうになり、ほぼ全裸状態。


「まず服を」

 

 探さないといけなかった。

 だがふと、変装マントの存在を思い出した。


「あれを使えば」


 マントを羽織り、なりたい自分を創造する。

 それは煌びやかでもなく、どこにでもいる屈強な冒険者。


 緑と青のコートに、赤と黒の文様の入ったシャツ。

 ズボンは黒と動物の皮を使っているのを創造する。

 顔や形も少し変えようと思ったが、湖に写る自分の姿を見て、もはや別人だと察する。

 服装だけ、変装マントを使う事にした。


「さて、色々と準備が出来た」


【やるのか? 復讐】


「まずは、師匠とアリナを・・・・・・」


 1人の偉丈夫がたった1日でデルファルド王国に舞い戻ろうとしていた。


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Bounty hunter Quest-バウンティーハンタークエストー AKISIRO @DrBOMB

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