第3話 レベルアップとハクスラ
雨音で目が覚めた。
少しだけ肌寒くなっている。
ぼろぼろのシャツとズボンでは、その寒さをしのぐのはとても大変だったはずだ今まででは。
体が寒さに柔軟に耐えられる。
最初、疲れているだけだから、感覚が鈍くなっているのだと思った。
しかし、冷たすぎる水たまりに手を突っ込んでもさほど冷たくなかった。
少しだけ凍っていたので、それが冷たくないはずがない。
【寒冷耐性を習得しています】
【温暖耐性も習得しています】
また感情の無い声が響いた。
どうやら、寒さと熱さに強くなってしまったようだ。
「次はこの3つの箱だが」
【こういうのをハクスラと言うらしい】
「ハクスラは確か、武器を片端から拾ってったり集めたりする行いの事だろ」
【ああ、そうだ】
「だが、俺はそんなに荷物は持てないんだが」
【その為のバウンティーブックだ。それにはアイテムボックスの機能がある】
「アイテムボックスとは勇者が使うような代物だろう?」
【まぁ気にするなってのさ、俺様は悪い神様だからなぁ】
「はぁ、あまり気にしないよ」
そう言いつつも、3個の箱を開けていた。
1個目=【マジック:ボムツルハシ】
2個目=【ノーマル:鉄の斧】
3個目=【ゴッド:絆の英知機能を解放】
ボムツルハシは炎のように燃え盛るツルハシだった。
機能は触れてみると伝わってくるし、神様が教えてくれる。
物を爆発させる事が出来る。
鉄の斧は見たまんまの鉄の斧。とりあえず2つをバウンティーブックに収納する。
本に吸い込まれる武器に少し面食らいつつも。
最後のゴッドについては箱を開いた瞬間に起動し。
脳内に何かが出現した。
それは、人物表のようなもの。
脳内に現れているのは、今まで関わりのあった人達。
フィルガルド師匠=Bランク
アリナ・マカフ=Aランク
マフィン・デルファルド国王=なし
ジフ卿=Dランク
等々、なぜかランクが表示されている。
【絆の英知はな、Sランクにしたら報酬がある、だが対象者が死ぬと、絆の英知が消滅する】
「これって」
【絆を深めれば上がるシステムさ、頑張り給え】
「ああ、そうだな」
今のクロルなら、バウンティーブックに載っているE級モンスターをターゲットにして刈り取る事が出来るかもしれない。
とりあえずその足で冒険者ギルドに向かった訳だ。
ぼろぼろのシャツとぼろぼろのズボン。
腕の筋肉は盛り上がり、腹筋は割れており、足の筋肉も盛り上がっている。
自分の体が自分ではなくなっていっている。
冒険者ギルドに辿り着く前に。
【お前は今殺人の罪で指名手配されている事を忘れているね、まさかバウンティーハンターが賞金首になるなんてな、それで冒険者ギルドに行くつもりか?】
「いや、無理だったな」
【方法はない訳ではない、冒険者ギルドの許可をもらう必要なんてないじゃないか、なぁ?】
モンスターを狩る時、冒険者ギルドの許可なくモンスターを狩ると、密猟扱いになる。
なので、人々は冒険者となったり、許可をもらったりする訳なのだが。
これはモンスターの食物連鎖が関係しており、デルファルド王国を建国した初代勇者が決めた事でもあった。
「それもそうだな、俺はもう大悪人だからな」
クロルは、影の入ったような表情を浮かべつつも。
ゆっくりとゆっくりと、城門の外へと向かおうとした。
だが、無数の騎士団員があちこちで目を光らせていた。
【なぁ? わざわざ門から出る必要はないだろう?】
「城壁を破壊しろと?」
【ボムツルハシがあるだろうさ】
「本当に君は神様なのか?」
【だから、悪い神様なんだよ】
クロルはバウンティーブックからボムツルハシを抜き取ると。
城壁に近づいていった。
そうして、ツルハシを思いっきり振り落とした。
爆発音が響き、城壁が瓦礫のように崩れていく。
地面が地震のように響くと。
騎士団の笛の音があちこちから響く。
騎士団員が破壊された城壁までにたどり着くまでには、クロルはデルファルド王国から忽然と姿を消した。
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