第5話:いつもと変わらぬトリプルびっち
昨夜は、トリプルびっちの一人でクラスメイトでもある御堂舞香とのライソが、ダラダラと日をまたいでも続けられた。そのせいで今日は若干寝不足気味ではあるけれど、どこか心地良い。
制服に着替えるなど学校に行く準備をしているとライソの通知音。御堂から何か写真が送られてきたようだ。
確認すると黄色の帽子を被ってにこやかにピースサインをしている幼稚園児。他の誰かと間違えて送ってきたのだろうか?
『うちの妹のよーちゃん。
可愛いでしょ』
間違えて送ってきたわけではないらしい。
『そうなのか! めちゃくちゃ可愛いね!』
『でしょ〜。
いま幼稚園まで一緒に向かってるとこ〜』
『そうなんだ? 妹さんの幼稚園までの送り迎えを毎日御堂がしている感じなの?』
これも意外と言えば意外とだった。
日々、合コンに明け暮れ男遊びが激しいあのトリプルびっちの一角、御堂舞香が実は妹の世話をしているなんて。
でも御堂は処女だって言い切っていたし、梅田麗羅と淀橋彩音の二人がヤバい子なだけで、御堂自身は身持ちの固い普通の女の子なのだろう。
『そそ、毎日ってわけではないんだけどね。
うちの母さんがよーちゃんの送り迎えをどうしても出来そうにない時だけね』
『そっか。車とか気をつけて』
『ありがと!
じゃあまた後でね』
『うん、また後で』
そう返して時計を見ると、いつも乗っている電車に乗り遅れそうな時間になっていて、こういう時に限ってタイミングが悪く、母親からおしかりの大声が飛んできた。
髪を整えている余裕もないまま、スクバを取って家を飛び出た。
▶︎▶︎▶︎
ギリギリ電車に間に合って、おはよー! の挨拶が飛び交う教室にたどり着く。
妹を送っていたはずの御堂も、もう席に着いていて、いつものようにトリプルびっちが朝から勢揃いして何やら話している。
御堂には声もかけず静かに席に着いてスマホを取り出し、オンラインゲームのダイナイにログインする。
『…でさぁ、彩音ったらみっくんともしたいなぁって言い始めちゃってさ。隣の洋輔くんがなんか複雑な顔しててウケたんだけど』
『麗羅がみっくんは上手いって自慢してきたから試したくなるじゃんか。今度一回だけ、彩音にもさせてくんない?』
『あーしは別にいいけどね? その代わりにあーし用に誰か連れてきてよ。洋輔くんはタイプじゃないから他の男子ね?』
ログインボーナスを受け取って、所属ギルドの掲示板を確認しながらトリプルびっちたちの話に耳を傾ける。
昨日ラブホ終わりでファミレスかどこかに合流したらしい。さすがに帰りがけに言っていた四人でってのはしなかったようだ。
『今日も朝からこんなおバカな話を聞かせてごめんね?』
梅田と淀橋の二人には内緒で御堂からライソが飛んできた。
一瞬スマホから顔を上げて、前の席に座る御堂の背中を確認したが、全くこちらを気にしている様子もなく、いつものように梅田や淀橋の相手をしている。
『全然いいよ。いつものことだし』
『慣れっこってこと?
うちらってそんなに毎日朝からこんな話してるっけ?』
『割としてるかな? 御堂がというよりは、主に梅田と淀橋が』
確かにそうなのだ。よくよく思い起こしてみると、御堂はいつも聞き役か、たまに二人にツッコミを入れるかで、御堂から進んで下世話な話をしているのは見たことがない。
(誤った固定観念っていうのはこうして作られるもんなんだな)
予鈴が鳴ったので、梅田麗羅と淀橋彩音はそれぞれのクラスに戻って行った。
『あのさ、棟田に頼みがあるんだけど…』
ホームルームが終わって、教室後ろにあるロッカーにスマホを入れに行くために、ゲーム画面を閉じて電源を落とそうとした時、御堂からライソのメッセージが送られてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます