第2話:トリプルびっちの一人、御堂舞香
「なんか、いつもうるさくてゴメンね? ね、ね、棟田はいつも黙々とスマホを弄ってるけど何してんの?」
(珍しいことがあるもんだ。僕に何か用か? なんで声をかけてきたんだろう?)
「結構有名なオンラインゲームだよ。中学の頃からハマっているゲームがあって、デイリークエストとかギルドクエストとか、日課をやってるんだ。
母親が夜勤の時は家でも出来るけど、そうじゃない時は、勉強しろ勉強しろって口うるさく言われるから学校で済ませてる」
御堂から話しかけられるのは初めてなので何処か戸惑いながらもそう答えた。
「そうなんだ? なんてゲーム? 面白い? もしかして女の子を攻略するエロいやつ?」
「ちがうよ! ギャルゲーは好きじゃない。ダイナイ、普通のRPGだよ!」
と全力で否定する。
「ダイ…ナイ?」
「うん。聞いたことないかな? 『ダイヤモンドナイト』っていって、最初はウッドクラスの騎士を色々なクエストをこなして、アイアンランク…、ブロンズ、ゴールド、プラチナ、ダイヤモンドまで昇格させていくゲームのことなんだけど…」
と、聞いては見たものの、ゲームに興味がなければ知るわけもないか。
「ん〜、なんだか聞いたことはあるかも? あ、あれだ! たまにイマスタに広告出てくるやつ?」
「そうそう。世界的にもめちゃくちゃ人気があって、50万くらいのプレイヤーが遊んでるらしい」
「へぇ〜、そなんだ? で? 棟田のいまのランクは?」
(なんか、めちゃくちゃ食いついて来るな? もしや御堂はゲームに興味があるのか?)
「こないだやっとゴールドになったところ。廃課金のゲーマーなら、もうプラチナになってるだろうけどね」
「ってことは、棟田は課金してないの?」
「貧乏高校生で課金はさすがに無理だよ」
と手をヒラヒラさせながら嘆いてみせる。
「バイトは?」
「一応、コンビニではしてる。平日は週一で学校終わりに行ってて、あとは土日。でも、シフトの希望がそのまま通ることは少ないから、土日の両方入れるってわけでもなくて、今はどっちかだけ」
「月にいくらくらい稼げてるの?」
御堂はそれまで半身だった体を全部こちらに向けて聞いてくる。
「今までのマックスは土日両方ともシフトに入れた時で月8万くらい。でも今は平均すると4〜5万くらいかな」
「そうなんだ? それでもお小遣い以外に使えるお金があるのはいいね」
(いや、僕はバイトを許可された時点で、親からの小遣いを貰ってはいないけどね?)
それを言うのもなんか話の流れ的には違うような気がして黙っておいた。
「御堂はバイトしてないのか?」
「うちは、親が多分許してくれないと思う。まだ聞いてみたことは無いけど、妹も小さいからね。
麗羅たちと遊ぶには結構お金かかるからどうしようかなって。服とかコスメとかもさ。
お金のこともそうなんだけど、最近あの二人のノリにもついていくのも正直しんどくなってきててさ…。バイトするのもいいかなって」
トリプルびっちたちも仲が良い一枚岩のように見えてはいるが、御堂的には色々思うところがあるようだ。
「友達付き合いも大変なんだな、でも金がないなら無理してまで一緒に遊ばなくても…」
「ま、そうなんだけどね…。男子とは違って女子の付き合いはややこしくなりがちだからね〜? ホント困ったよ」
「パパ活とかはしてないのか?」
「やめてよ〜。うちがパパ活なんてやるわけないじゃん?」
「梅田や淀橋はしてるような事、前に言ってなかったっけ?」
「あ〜、麗羅たちはね…? って棟田、結構しっかり聞いてんじゃん、うちらの会話」
しまった。これは失言だった。つい、流れで口をついてしまった。
「ごめん」
「また謝ってる。でもまあ仕方ないよね? 前の席で話しているわけだし、あの子たちも放課後は人が少ないからって、周りを気にしないでアケスケになんでも話してるから」
「ホントごめん。今度からイヤホンするよ」
と謝る。
「いやいや、そこまでしなくていいってば。
聞かれたくないことなら大声で話さないだろうし。てかさ? 棟田はうちがパパ活するような感じに思ってたんだ?」
(やばい! そっちの方が気を悪くさせたか?)
「いや…、そういうワケじゃなくて…」
「トリプルびっちの一人だから?」
「いや、単に三人でその話しをしていたから、三人ともパパ活してるのかと思っただけで。
ていうか、御堂は自分たちのことを、トリプルびっちって言われてるの知ってたのか」
(呼ばれて嬉しい名称でもないだろうに)
「みんなが陰でそう言ってるのくらい知ってるわよ。
…でもまあ棟田ならいいか。あまり友達いなさそうだし、口が軽い訳でもなさそうだし。実はうち、まだ処女だよ?」
「ええっ! マジで? しょ、処女??」
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