第3話 疑惑


「あんた、この場所に今まで来たことあるのか?」

 

 

 この場所は死体を埋めるのに最適な場所だが、見つけるのはかなり難しい。山岳経験があっても技術的にも足を踏み入れるのが難しい場所なのだ。



「ここには今夜初めて来ました。」


 女のが地面に置いたゴミ袋から異臭がかすかに漏れ出している。中に死体が入っているというのはやはり本当だろう。

 


 その時、初めて気が付いた。周りにいくつか大きな穴が掘ってあるのだ。よく見ると掘り返された土がわずかに盛ってある場所もある。

 これらは自然にできるような穴ではない。

 

 ――この女は何者だ? 

 

 「あんたさ、今夜、初めてこの場所に来たって言ったよな?」

 「はい」

 「嘘つくな。あんたは何回もこの場所に来ているだろ? ここは山に初めて来るような、素人しろうとが来れるような場所じゃないんだよ。しかもそんな格好で」

 「……」

 「――?」



 そうだ。この場所はよく見ると掘り返された場所がいくつもあり、それが再び埋められているのだ。土が新しいからよく見ればわかる。

 そしてすでに新しい穴も数個掘ってある。



 「……今夜、勝手にここに来たのはあなたの方です。困るんですよね。」



 そう言うと突如、女はポケットから小型のナイフを取り出すと、凄まじい速さで俺に駆け寄ってきた。

 女が手にしたナイフが目の前で銀色に鈍く光った。


 (――――――!!!) 


 それは一瞬の出来事だった。

 ざくりという感覚と共に目に鋭利な痛みを感じた。眼球の部分を一直線に左右に切り裂かれたのだ。どくどく熱い血液が目から下に流れてくる。



「め、目、目が!?」

「見たらいけないものをあなたは見たんです。あなたは私の犯罪を見てしまったんですから」

 

 痛みと恐怖で両手で顔を覆い、自分もこの女の殺人の「目撃者」であったことに気が付いた。


「楽に死なせてあげますよ」

  

 首に鋭利な痛みを感じたと思った時には、生暖かい血が噴き出しているのがわかった。

 


 ――急激に意識が薄れていった。

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