第2話 学校にて


ギリギリ学校間に合ってよかった~。

奇跡的に超かわいい小塙さんとも一緒に登校できたし、今日はついてるな。

さて、自分の席に座ると隣はまだ空席なことに気付いた。


「また一時間目バックレるのかな?」


僕の隣という位置には代川しろがわ芭恋はれんという金髪でギャルの子が座っているのだ。

まあ隣と言ってもいってもそこまで親睦は深く無い。

友達とマックで朝食してたり、いろいろ乱雑だったりする子で、話すことは多くなかった。

やはりこの世界でもギャルと分かり合えることは不可能なのかね?


まあそれでも芭恋さんとの思い出もあるわけで、その一つがエッティイラスト事件である。


――――美術の授業中のことであり、課題の作品も作り終わった僕は暇だったので、その時も隣に座っていた芭恋さんに対して、【男女が軽くキスする】絵を見せた。

十分ぐらいしか掛けてない陳腐な殴り書きイラストだったけど、それに対して芭恋さんは大きく反応を示した。


「ちょっ//、そういうのよくない!!」


いつもは足を組んで偉そうにしている彼女もこの絵を見た瞬間に、ピシッと姿勢を戻して真面目に注意をしていた。

―――いつも不真面目なのになんか癪だなぁ……。

そう思い。ムクムクと残虐心のある悪意が湧き上がってくる。


次にドドーンと見せた絵はもう少し攻めたやつ、

【女の子が四つん這いで例のゴムを口にくわえてる絵】

を作ってみた。まあ例のゴムが伝わらなかったら輪ゴムとでも思っておけばいいよ。

流石に保険の授業でソレについては習ったから、ラブコメ読まなくても芭恋さんに伝わるはず……!!


「なっ……なっ……」


案の定、さらに取り乱してしまう芭恋さん。

反射的に目元を手で覆っていたけど完全に見えていた。

綺麗な指先にはマニキュアが輝いていた。


こうやって遊んでいたら暇だったはずの美術の授業が直ぐに去ってしまったのであった。



~~~~~~~~



「おっはよ~東雲~」


一時間目が終わったくらいで、芭恋さんがゆっくり登校してきた。

フライドポテトのような揚げ物の匂いがして、やっぱ朝食友達と済ましてきたんだなと確信した。


「そういえばMサイズのポテトが一個余ってるんだけど東雲いる~?」


やっぱフライドポテトだったんかーい。

要ります、女子からもらうポテトとか貴重過ぎるって。


「あ、ウチお金ピンチだから割り勘になるけどいい?」


芭恋さんが「おねがーい」って両手を合わせてお願いしてくる。

勿論払いますとも!!

逆にその貴重なポテトに国から関税かからないのが不思議だわ(?)


「ありがとう、芭恋さん」


ホクホク……でなくてもう冷たいけどフライドポテトを貰う。

これで400円は安すぎる。


そうして満足している僕を見ながら、芭恋さんは少しモジモジさせながらあることを聞いてきた。

先ほどまでの態度とは打って変わってどうしたんだろう。


「そ、その、新しい絵とか描けてる?東雲の絵とかイロイロ参考になるし、見たいんだけど……」


「イロイロ?美術の授業とかに参考にするってこと?」


「う……っんうん!!!それそれ!!」


「じゃあ今見せる必要ないんじゃない?」


「え……でも……。ほら、あらかじめ写真とか取ったら更に参考にしやすいかなって!!」


「ほーん」


芭恋さん可愛すぎます。

もう私的な目的でイラストを使うことは目に見えいるけど本人自身は隠せている判定らしい。

また口にするのも恥ずかしいからカタコトな嘘をついてしまうのが更に良い。

どうしても写真せがみしてくるのもさらなり。


「いいよ。みなよ」


僕としてもすでにイラストは芭恋さんの反応を見るために一枚用意していたのだ。

それがこのイラストぉ!

【清楚美少女の膝枕】

女性が膝を貸して、男性が寝ている体制になっている感じ。

清楚とか自分で言っておいて登校中に会った小塙さんと姿を重ねてしまう。


さて、果たしてどれだけの反応を示してくれるのか(ワクワク)

僕はチラッと芭恋さんの顔を見た。

……しかし、(?)と疑問符が頭に飛び交っていたのだった。

確かに、イチャイチャっぽい雰囲気で顔を赤らめてはいるものの、肝心な反応を全くもらえない。


「もしかして膝枕ご存じない感じ?」


「東雲なにそれ?」


駄目だ。この国は義務教育が果たせていない。

主要五教科、実技四科目、膝枕一単元、これが前世の常識だ!



~~~~~~~~~~~~~



「――ふうん」


とりあえず、膝枕とは何なのかを一通り芭恋さんに教え終わった。

芭恋さん自身の膝枕に対する第一印象は【親子でやるやつ】だったらしい。

いやいや恋愛でも全く適用されるんや、そう教えた。


「でも恋愛とか全く関係ない気がする。東雲一緒にやってみない?」


「え?何を一緒に……」


「膝枕に決まってんじゃん」


え?しっかりと膝枕は恋愛だよって、カップルしかやらんやつだよって教えたよね?


「なんか言われてるだけじゃもどかしいんだよね~。東雲!協力しないと君のイラスト先生に報告するからね!」


ビシッと鼻のあたりに指さされる僕。

さらっと恐ろしい事を言われたのは気のせいだろうか?

もし先生にバレて上に報告されなんてしたら、退学とか普通に視野に入る事なんだけど……。

性に関しての作品はA教と憲法どちらにも触れるため一発アウト。

この世界の常識はすでにトチ狂っている。


「別にウチの膝がカッチカチに固い訳じゃないんだし、気にする事ないじゃん?」


「え……えぇ?!」


抵抗もむなしく一方的に約束をつけられてしまう。

こうして昼休みには人目の少ない屋上へ引きずり出されてしまった。


「ほら、東雲寝っ転がってよ」


「まずは芭恋さんが座るのが先でしょ」


ギャアギャアと言いあって、どうにか膝枕が出来る体制まで整った。

後は僕が頭を小塙さんの膝に乗せるだけだけど……。


「……東雲どうかしたの?」


「……」


いや、あまりにもハードルが高すぎる。

まだ街角で女子高生としかぶつかったことが無い僕に膝枕をしろと?

やっぱり、今からでも辞退した方が身のためかな……?

そう思いながらスーッと目を逸らしていると、


「えいやっ」


そう可愛らしい掛け声共に、グイと体を倒されてしまい無理矢理に膝枕の体勢を作らされた。

突然の事で何が何だかさっぱり理解できなかったが、視界に小塙さんの顔と大きな胸が映ったところで現状をやっと飲み込むのであった。


「どう?ウチの膝枕気持ちい?よく妹にやってるやつなんだけど、結構楽でしょ?」


いつも僕にまるっきり興味なかった小塙さんが、今では膝枕に全集中して癒してもらっている……。

多分妹に見せているであろう、大切なものを見る様な温かい視線に当てられていた。

―――これ恋愛を分け与えられてるの僕の方なんだけど。


「膝枕……心安らかなり……」


「このまま五時間目サボっちゃう?」


ついでに小塙さんが悪魔的な提案をしてきた。

でも流石に授業は真面目に受ける主義なので、丁重にお断りさせていただこう。

……と、思ってたんだけど……。


「いいじゃん、そう言う事も楽しいし。ちょっと寝てて良いんだよ?」


そう言いながら小塙さんは僕の視界を手で覆うと、心地よい程度で体を揺らしてきた。

その攻撃が昨日、小説書くために徹夜しまくった僕にダイレクトアタックした。


「……ZZZZ……」


「きゃはっ!本当に寝ちゃったw」


その結果、小塙さんに寝顔を撮られたうえに、五時間目を丸々サボって怒られてしまったのであった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ラブコメを描いたら厳しく罰せられる世界でも僕は性癖を布教して狂信者を大量につくる 九条 夏孤 🐧 @shirahaku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ