クリスマスに大人しくなんてしない
「サンタ、襲っちゃわない?」
ただでさえイカついそのツリ目を不気味に細め、口を大きく三日月型に歪めたセツがそう言った。
一瞬、意味を呑み込めずに惚けてしまったが、畳みかけるようにセツは続ける。
「ほら、今夜いい子のもとにプレゼントを届けるために飛び回るはずでしょう?サンタさん。ならば、ですよ。彼を襲って、そのソリを積み荷ごと盗っちゃえば、私たちのもとには大量のプレゼントが、クリスマスを楽しむ人々には落胆が、WIN-WINじゃないですか。」
クスクスと、なにが楽しいのかセツは笑い続ける。
WIN-WINというか、俺たち側のWINが二つなだけで言葉の使い方が間違っていると思うが…。
「無理だって。これまで何人が同じこと考えてサンタクロースを襲撃したと思ってるんだ?それも僕らみたいな不真面目程度の悪い子じゃなくて、もっとマジめに悪い奴らが、だぜ!?」
とーんでもない悪党たちが、とその比較的ちいこい体と腕を大きく振るオーロ。
「いや、サイコーじゃねぇか。どうせ悪い子と決められたオレらだ、一回ぐらいちゃんと悪いことしてやんのも悪かないね。」
げらげらと笑いながら、吐き捨てるようにアキは言った。
そう、どうせ俺たちは悪い子だ。真面目に悪い子を遂行してみるのも、なんか自然な気がしなくもなくもなくも…
けどまぁ
「サンタを襲撃するとかどうかは別としてさ、一回、サンタに会いたいよな。サンタに会って聞きたいんだ。良い子じゃなきゃ悪い子なのか。そんなに俺は
今年が最後なんだ。来年には俺たちはサンタによるクリスマスプレゼントの配送の対象年齢から外れる。あの最初に悪い子の称号をもらったあの日から今日まで、ずっと悪い子だと言われ続けたんだ。
周りの大人から、あれがダメだったんじゃないか、これがダメだったんじゃないか、と悪い子たる要因はさんざん説教された。でも俺は納得しきれなかった。
せめて、最後の年は。今年ぐらいはサンタに会いたい。
そしてその口から、悪い子だと告げられたなら、俺は自身を納得させられるはず。
悪友どもは口元をニヤニヤしながら俺を見ている。
たぶん考えていることはほぼほぼ同じだ。やってやろう、最後ぐらいやってしまおう。どんな結果になろうと盛大に笑って。盛大に怒られよう。
「じゃあ、クリスマスの予定は決定、ってことでいいな?」
アキは立ち上がって、俺ら一人一人の顔を見た。
力強くうなづく。
「第一目標は、サンタに会うこと。で、もし、もしも奇跡的にできたら、ソリと積み荷を奪ってパーティってことでいい?」
クスクスと笑いながらセツが立ち上がる。
「クリスマスだし、どんな奇跡だって起こりえる、はず!」
カバンを背負いながらオーロも立つ。
「うん、じゃあ。やりますか。」
俺は立ち上がり体についた雪を払い落し、マフラーを巻きなおした。
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