第2話 俳句の投稿と高いヒーロー像

 気がつくと、年齢を重ねるほどに、私の好みが何か退行しているような感覚があります。

 中学の頃は哲学や心理学の本を読んでいたのに、今では恋愛やファンタジーの物語ばかりを手に取るようになりました。


 どうしてこうなったのか、自分でもよく分かりません。ただ、そうした物語を読むたびに、「自分もこんな世界を作ってみたい」と思うようになったことだけは確かです。


 ある日、テレビで俳句を特集しているのを見ました。なんだかいいなと思いました。

 日本古来の由緒あるものが、今もなお大切にされている――それが嬉しく感じたんです。まだ二十歳にもなっていないのに、妙に心惹かれました。


 そんなふうに感じたら、挑戦してみたくなる性分です。でも、いざ俳句を書こうとすると、いい題材がなかなか浮かびません。

 私は意外と完璧を求めるところがあって、思うように書けなくなることがよくあります。


 そんな中、ふとアニメを見ていたとき、なぜだか心が揺さぶられるような感覚を覚えました。

 その気持ちのまま、いろいろと書いてみたものが、気づけばストックとして山のように溜まっていました。


 でも、後で見返すと、何を書いたのか分からない。あのときの感情を文字にするのに精一杯で、整理されていなかったんです。

 それが少し悲しかった。


 いざ投稿しようと思ったとき、不思議と恐怖を感じました。特に何も気にしていないはずなのに、あれは何だったのでしょう。

 それでも、意味が通るものを投稿してみると、結果は惨敗。評価の仕組みも分からないまま、「まあ、こんなものか」と感じたことを覚えています。


 それから、俳句以外にもいろいろと書いてみました。好きだったジャンルのネタを、とにかく全部形にしてみる。

 その中で、途中で書けなくなった作品が10作ほどあったと思います。


 不思議なことに、それらの作品には共通点がありました。それは「自分がいない」こと。

 私は、自分自身のことがあまり好きではなくて、空想の世界に自分を入れたくなかったんです。


 その結果、イメージが湧かず、しんどくなって手を止めてしまった。

 放置された作品たちは、今でもその状態で固まってしまい、続きを書くことができません。


 そんな中、人様の作品を読んでいくうちに、自分の性格の一つに気づきました。

 私は男子に対して高い理想を抱いているようで、それを満たさないキャラクターを見ると、少しムズムズしてしまうんです。


 特に、それがヒーローだとしたら……。内容がどんなに良くても、「こんなヒーローだったら、私の理想の方がいい」と、つい噛みついてしまう。


 そこで、私自身の「愛が欲しい」という思いをヒロインに投影し、物語を書き始めました。

 すると、ヒロインが自殺してしまったんです。


 そのとき気づきました。「私って、こんなにメンタルが弱かったのか」と。

 感情移入をするうちに、ヒロインは「幸せな瞬間に死にたい」と思い、毒を飲んでしまったんです。


 そこから彼女を助けるのは大変でした。AIに相談しながら、なんとか方法を見つけて物語を続けることができ、少し安心しました。


 そんな経験があったからか、後に投稿した「すれ違う善意」は、個人的には大失敗だったと思っています。

 でも、それを戒めとして投稿することで、将来の自信作が評価されなかったとき、ヒロインのように自分も折れてしまわないように――そういう思いがありました。


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