当日は世に無いもの探し

「ここは包み部」


「名前の通り注文部から届いた商品たちを包んでいくんだ...」


こいつ...


性別どっちだ?


女にも見えなくもないが男にも見えるしな。


ふと、なにか素早い動きが目に入った。


その正体はすごい速さで商品を包んでいるゴリの姿だった。


「速...」


「ね、すごいよね...」


「ゴリはこの部のプロであり、エースなんだよ...」


そんな話をしていると


「朔斗〜!!!おまたせ!!」


「ごめん待ったよね?」


とデート待ちのカップルかみたいな口調で話しかけてくる。


どうやら秘書こと0番さんとの話は終わったようだ。


「しゃ、しゃしゃしゃしゃ..社長!!!」


「おおおつかれさまです...!」


「23番くんじゃーん!!今日もお疲れ様!」


そう言って灯は23番さんの肩をポンポンと


2度叩いた後、


メダルのような何かを首にかけた。


「ありがとうございます!!!」


そう言って23番さんはスキップをしながら


どこかへ行ってしまった。


なんなんだろうか。


本当に。


てか、


「男だったんだ...」


「ん?あぁ、23番くん?」


「そう」


「分かりずらいよね〜」


「てかあのメダル何...」


「え?おもちゃ」


「は?」


「あれ、あげとけばどうにかなるから」


「酷...」


にこにこでそんなこと言うのやめて欲しい。


「それより!次は私のところでしょ?」


「...うん、」


「レッツゴー!!」


「って言いたいところなんだけど...」


「今は教えない」


「は?」


ちょっと楽しみにしていた自分がいることが


気に食わない。


「当日のお楽しみで!」


「当日なんてすぐ来るよ!!」








「当日まで休んでていいよ」


そう言って案内された場所は会社の休憩室。


ベッドまで置いてあるなんて。


さっき、


廊下を歩いているときに見てしまったことがある。


それは社員たちの出勤時間についてのものだった。


まさかの朝出勤チームと夜出勤チームが


あるらしい。


朝出勤チームは昼に仕事を終え、


夜出勤チームは昼に仕事を始めるらしい。


しかもあの時言った72番さんの『僕たちも一般人だから』という言葉。


もしかしたらあの人たちもゴリも全員一般人で、


俺と同じ世界を生きている人達なのかもしれない。


だけど隠れてこの仕事やってるみたいな。


なんかそう考えるといいな。


なんか。


言葉では言い表せないけど。








気づけばあっという間にクリスマス当日になっていた。


この休憩室で過ごしたら時間が早くなるのかもしれないって思ったりもした。


けど、単純に俺が寝すぎたせいかもしれない。


「朔斗ー!!!」


すごい音と共に灯が休憩室のドアを開けて中に入ってきた。


「え、寝癖すごいよ」


「本当に」


入ってきて第一声それかよ...


しかもガチトーンで言うのやめて欲しい。


「ほら自分でも見てよ」


そう言いながら俺の目の前に鏡が置かれる。


その鏡に映し出されたのは鳥のトサカのような髪型になった俺の姿。


「本当じゃん...」


「まぁ、そんな時こそ私の魔法で──」


「あ、」


「え?」


魔法?


今こいつ魔法って言った?


よな...?


「嘘嘘嘘!!」


「冗談だよ冗談!!」


明らかな言い訳をしながら口笛をピューピューと吹いている。


どうやら本当のようだ。


「さっ、今日は当日だから私の仕事見て!」


話を逸らすようにそう言われ


「分かってる」


と内心期待しつつも素っ気なく返事した。






灯の仕事場に向かう際に通った廊下で


色んな人とすれ違った。


だけど誰もクリスマス前と違い、


灯に挨拶しなかった。


不思議に思ってると


「朔斗、前ちゃんと見て歩いて」


と誰かに怒られる。


誰に怒られたかと思えば、


俺を怒った人は灯だった。


なんだかクリスマス前と雰囲気が全然違うように感じる。


「ごめん...」






「着いたよ」


そう言われ、俯いていた顔を上げる。


と、そこには不思議なオーラーを漂わせた1つの扉がある部屋だった。


部屋の内装は一見、


扉以外は何の変哲もない執務室って感じだった。


「灯様、今回の仕事は多いようです」


そんな声と共に、


いかにも " 秘書 " っていう感じの人が入ってくる。


「お取り込み中でしたか?」


俺を人目見てはそう言った。


「全然?」


「さっ、時間無いから早く仕事始めちゃおう」


「かしこまりました」


俺の目の前で淡々と話が進んでいく。


「こちらの方はどうしましょうか?」


「あ、あの俺...」


何かを言おうと口を開いた時だった。


「いい」


「私と一緒に " あっちの世界 " に向かうから」


そう言いながら灯は俺の言葉を遮った。


それより『あっちの世界』とは何のことだろうか。


「そうですか...」


がっくりとしたように肩を落とす秘書さん。


「それより0番、自己紹介したら?」


少し不機嫌そうな表情を浮かべた灯がそう言う。


「そうですね」


「申し遅れました」


「灯様の秘書である0番と申します」


そう言ってぺこりとお辞儀をする。


「朔斗様もきっと思いましたよね?」


急にそう言われ思わず、


「え?」


と疑問の声を漏らす。


「灯様の態度ですよ」


「クリスマス前まではあんなにバカげていたのに今はキリッとしてらっしゃって...」


少し馬鹿にしたような口調でそう言う。


「まぁ...」


そう俺が返事したのとほぼ同時に


「0番、余計なこと言わないで」


と灯の口から聞いたことの無いくらい


低いトーンで0番さんを静かに怒った。


背筋がゾクリとする。


前に喋っていた灯とは全く違う、


別人のように感じたからだろうか。


それはそうとあの扉が気になった俺はじっと扉を見つめた。


扉には鍵穴がついていたが、


見ただけでも分かる複雑ようだった。




「0番、最初の手紙読んで」


そう灯が言うと、


0番さんはどこから出したのか分からない手紙を手に持ち、読み始める。










「『しろくて、ふわふわで、まるくて、すべすべなおともだちください!』です」


と急に0番さんの声が幼い女の子のような声に変わった。


俺が困惑してると


「0番はロボットだから」


と更に困惑してしまいそうな言葉を呟く灯。


俺は我慢しきれなくなって


「ロボット...?」


と声を漏らす。


「私は灯様の祖父、初代サンタクロースによって造られたロボットです」


そう言っているが、


どうにもロボットには全く見えなかった。


喋り方も動き方も仕草だって、


人間にしか見えない。


「なので、手紙の持ち主と同じ声で喋ることが出来る " 超高性能な " ロボットなんです」


なんだか強調が凄かった部分があった気が...




「そんなことで時間使ってないで早く行くよ」


灯がそう言いながら俺の腕を引っ張る。


態度は変わっても、ここは変わらないんだな。


そう思いながら俺の腕を掴む灯の手を見る。




扉の前に立った灯はポケットから鍵を取りだした。


何個もの鍵がついているもの。


その中の犬と猫のキーホルダーがついた鍵を


扉に差し込んだ。


急に景色が眩しくなり、


思わず目を瞑ってしまう。




段々目が慣れてきて辺りを見回す。


と、


そこには大きな動物園のような建物があった。


動物園らしき建物の看板には『創造獣園』と


書いてある。


「そうぞうけものえん...?」


「名前の通りですよ」


俺が不思議そうにしていると急に後ろから


0番さんが話しかけてきた。


「ここは子供たちが望む...というか想像した動物たちを創ることが出来る場所です」


子供たちが望む...


「でも望んでる子供はここにいないじゃないですか」


「どうやって創るんですか?」


「手紙を使うんですよ」


手紙?


ヒラヒラと揺らし持っている0番さんの手にある手紙を見る。


と、仄かに光っているように見えた。


「気づきましたか?」


「これは───」


「出来たよ」


0番さんが説明しようとしたと同時に


灯のそんな声が聞こえた。


1番気になるところで切りやがって...


「次行くよ」


そう言って灯は俺にふわふわの毛玉みたいな


生き物を渡した。


「キュゥ?」


そう言いながらその生き物は俺にスリスリと


身体を擦り付けて来る。


「こいつはどうするんだ?」


そう灯に問いたつもりが返ってきたのは0番さんからだった。


「包み部の人が後で取りに来てくれるので大丈夫です」


包み部...


ってゴリのとこか。

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