第8話
散々泣いて泣きつかれた俺は
やっとの思いで、新庄さんから離れた。
新庄さんの服には俺の涙と鼻水とよだれで
グショグショになっていた。
高そうな服になんて事してしまったんだと思い
土下座する勢いで謝った。
「す、すみません。俺のせいでこんな、クリーニング代、いや、弁償します!」
と誠心誠意謝る。
「いや、このくらい君が負った心の傷に比べれば大した事はない。むしろ謝るのはこっちの方だ。出張から帰ってくるまで知らなかったとは言え本当にすまなかった。」
と新庄さんは丁寧に謝罪してくれる。
この人が助けてくれた事は変わらないし
この人が悪いわけじゃないって事も
怒るべきなのがこの人じゃないって事も
分かってる。
分かってるのに、感情が止まらない。
新庄さんの胸ぐらを掴みながら言い放つ。
「俺は、Ωでαには到底抗えない。
痛くても苦しくても辛くても、ずっと誰も助けてくれ、な、かった。自分の、感情とは真逆に身体が疼いて、たまら、な、くて、、、。嫌なのにぃ、、ひっく。っん。うっ。ひっ。ぐ。
すごく、嫌、、だっ、だのにぃ、、、。」
怒りたいのに、
涙が出て上手く伝えられないのが悔しい。
泣きたくないのに、さっき散々泣いたのに。
涙が邪魔して言葉を繋げる事が出来ない。
すると、
「本当にすまない。これからはもう絶対ないと誓う。俺がさせないから。」
と新庄さんは、また俺を抱きしめて頭を撫でてくれる。
その優しさが俺の張り詰めた糸をきる。
もう身体も心も限界だった俺は
その手の中で意識を手放した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます